本研究課題の2018年度の成果としては、まず単著『博文館「太陽」と近代日本文明論――ドイツ思想・文化の受容と展開』(勉誠出版)によって、国立大学法人岡山大学より博士(文学)の学位(博乙 第4502)を取得したことが挙げられる。著書の出版自体は、2017年11月であるが、2018年度にこれまでの研究成果と合わせ、学位取得のための文書を作成し、書類審査と口頭諮問に合格することができた。 論考としては、「森鴎外の日本」と題して、「中日新聞」(夕刊)(2018年12月14日(金)、12月21日(金)、12月28日(金))に、ドイツを中心とする西洋文化受容をとおしての鴎外の精神史について考察し、「明治150年」を経ての現代における鴎外文学の意義について論じた。また、今後の研究に関連する書籍として、美留町義雄『軍服を脱いだ鴎外――青年森林太郎のミュンヘン』(大修館書店 2018年7月)の書評を日本比較文学会『比較文学』第61号(2019年3月)に発表した。ドイツ語文献を駆使して鴎外作品の再解釈をおこなうという、今後の研究テーマの追求において具体的に多くの示唆を得ることができた。 さらに、「明治150年、森鴎外の〈心の飢〉の豊かさ」(岐阜県私学高等学校保護者連合会 2018年6月6日(水))、「森鴎外の『花子』--岐阜ゆかりの女優の活躍」(岐阜県図書館 2918年8月5日(日))、「〈日本のハイネ〉としての田岡嶺雲」(ハイネ逍遥の会 2019年2月23日(土))の口頭発表をおこなった。それぞれ、ドイツ思想・文化からの影響のもと展開された、「国民国家確立期の〈民族精神〉」による鴎外および嶺雲の〈国民文化〉論の成果の内実を論じた。 なお、2018年度の成果の論考として、「ルドルフ・オイケン」(『ドイツ哲学・思想事典』ミネルヴァ書房 2020年6月刊行予定)がある。
|