研究課題/領域番号 |
16K02404
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
田中 康二 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (90269647)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 富士谷御杖 / 言霊倒語説 / 表裏境説 / 百人一首灯 / 土佐日記灯 / 万葉集灯 / 真言弁 |
研究実績の概要 |
五年計画の一年目にあたる平成28年度は、申請した一年目の計画に基づいて研究を遂行した。すなわち、ポスト本居宣長の一人として、富士谷御杖(1768~1823)を取り上げ、その事跡を調査し、その業績について資料収集した。その結果、以下の知見を得た。 まず、御杖の「言霊倒語説」は表現論としてスタートしつつ、解釈学へと傾倒していき、独特の古典学をうち立てるに至った。つまり、歌人としての「詠歌」と歌学者としての「歌論」がともに一つの統一された理論によって説明できることを立証したのである。このことは活字化して、鈴木健一編『江戸の学問と文藝世界(仮題)』(森話社、平成29年度刊行予定)に掲載されることが決定している。 次に、御杖の解釈学(表裏境説)について検討した。当該説は言霊倒語説を補完する関係にある概念であるが、それは必ずしも御杖のオリジナルの思考法ではなく、先行する学説を批判的に受容することによって成立したものであると推定した。 第三として、御杖解釈学の要ともいうべき「灯」概念の変容について検討した。『百人一首灯』を濫觴として、掉尾の『万葉集灯』に至る、一連の古典注釈書「○○灯」が、表現論としての「言霊倒語説」や解釈学としての「表裏境説」を理論的根拠としつつ、実際の古典文学作品に即して応用されていく過程で、強固にしてしなやかな注釈法を見出していったことを実証した。 以上の三点について調査分析をし、考察論証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ポスト本居宣長という観点から富士谷御杖の古典学を見るという視角を設定し、これについて主に『新編富士谷御杖全集』に収録された作品によって検討を進めた。その結果、当初設定した三つの観点について、おおよその見通しを得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
おおむね研究計画に沿って遂行できると思われるが、随時発生する問題点については適宜解決の方向性を探りつつ、研究を推進していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を始める年度に研究環境インフラとしてPCとプリンターを購入することを想定していたが、以前から使用しているPC等にまったく問題がないので、それらに支出する額を繰越額とした。
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次年度使用額の使用計画 |
前記「理由」に記載したPC等に不具合が出た段階で、次年度以降に支出することとしたい。
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