研究課題/領域番号 |
16K02404
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研究機関 | 皇學館大学 |
研究代表者 |
田中 康二 皇學館大学, 文学部, 教授 (90269647)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 小学教科書 / 国語 / 国史 / 修身 / 玉くしげ / 本居宣長 / 天明八年 |
研究実績の概要 |
五年計画の三年目にあたる平成30年度は、当該課題に関して通時的(歴史的)アプローチと共時的(同時代的)アプローチの両面から研究を進めることができた。そもそも「異形の近世注釈の系譜学」は主に近世後期において、ポスト宣長という観点からユニークな古典注釈とされる研究を通時的・共時的に位置づけようとするものである。それゆえ、歴史的位置づけと同時代的位置づけを両方とも行うことが眼目である。 まず、通時的アプローチとしては宣長国学が近代、とりわけ昭和戦争期の教育現場でどのように教えられていたのかということを実証した。特に小学校の教科書に掲載された宣長国学の言説に注目して、敗戦をはさんでそれがいかに変容したかということを追究した。その結果、国語・国史・修身の三科目において、戦時中から宣長国学が扱われていたが、国語は戦後、宣長国学の教材が消滅し、国史は戦後、尊王論の文脈から近世学問の文脈へのパラダイムシフトが行われ、修身は戦後、教科そのものが消滅し、宣長国学ももろともに闇に沈んだ、という結論を得た。 次に、共時的アプローチとして宣長が『玉くしげ』を執筆した年(天明八年)における同時代的状況について追究した。同年1月末に発生した京都火災(天明の大火)をはさんで、「古代」という概念がクローズアップされるという出来事があった。歌人は失われた都に思いを馳せ、国学者は古代を復興させるべく論陣をはり、政治家は大政委任論を唱える一方で寛政の改革を断行した。それらをすべて同時代現象として考えると、共時性(シンクロニシティ)という概念を想定せざるを得ない。 以上、二つの方向性で研究成果を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
三年目の折り返しとしては、それなりに成果と実績を積むことができた。
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今後の研究の推進方策 |
上記の通時的アプローチには可能性を感じている。次年度以降も、この方面からのアプローチを続行する予定である。
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