研究課題/領域番号 |
16K02405
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研究機関 | 奈良教育大学 |
研究代表者 |
中谷 いずみ 奈良教育大学, 国語教育講座, 准教授 (10366544)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 集団的記憶 / ホモソーシャル / ホモセクシュアル / 被爆者表象 / プロレタリア運動 |
研究実績の概要 |
今年度は、以下の調査研究を進めた。 1、「戦争への抵抗と責任 ―松田解子『地底の人々』と強制労働の記憶―」『社会文学』第46号、2017年 2、『〈原爆〉を読む文化事典』(川口隆行編、青弓社、2017)において「核をめぐる運動とジェンダー」「原爆乙女」「核・原爆を演じる」を担当 3、日本近代文学会(2017年10月)にて「空白の「文学史」を読む―“政治と文学”にみるジェンダー・ポリティクス」を発表、また国際シンポジウム「1930年前後の文化生産とジェンダー」(2018年1月)にて「階級闘争と女性解放の夢」を発表 4、大江健三郎「われらの時代」における戦争表象とセクシュアリティについて調査分析 1は昨年度の調査研究を活字化したものである。2では、戦後日本における反核運動において女性がどのように関わってきたのかについて、表象をめぐるフェミニズム批評との衝突や交渉を含めて整理した。また被爆者表象が女性に割り当てられる際に見られる受動的主体の前景化が、戦争被害をめぐる記憶の形成に加担してしまうものであること、またそれが冷戦における日本の国際的地位を忘却させるものであることなどについて論じた。また受動的主体として語られがちだった女性被爆者像に亀裂を走らせるような女性像が近年の作品では見られることなどについて、被爆の問題を描いた戦後の文学/表象作品を取り上げて論じた。3は、戦前のプロレタリア運動におけるジェンダーの問題を調査分析したものの報告であり、抵抗運動におけるジェンダーやセクシュアリティの表象を考えるとともに戦後の集団的記憶におけるジェンダーとの連続性/断絶性をみるための基盤となる研究である。4については、大江健三郎の長編小説「われらの時代」の登場人物たちについて、過去・現在・未来という時間表象の観点から分析を試みることで、戦争をめぐる語りと同性愛表象について考察を行っているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
戦争文学/表象におけるジェンダー・セクシュアリティ表象について、調査分析を進めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果を踏まえつつ、ひきつづき戦争をめぐる記憶の問題として文学/表象におけるジェンダー・セクシュアリティの調査分析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度末に職場異動が生じ、その準備等のために予定していた調査出張を行わなかったことで残額が生じた。今年度は海外調査を予定しているのでそれに充てる計画である。
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