研究実績の概要 |
本研究は、研究代表者が20年来行ってきた九州各地の国学に関する研究について、その各地域の特性や共通性を探り、各文庫の調査を通して学者間の交流を解明しようとするものである。また、それに平行して台湾大学図書館が所蔵する近世後期の国学者長沢伴雄の日記24冊を活字化して公刊し(全5巻)、広く研究者に提供し、当該研究に新展開をもたらすことを目的としている。 すでに研究代表者は九州の国学を中心に研究を行ってきているが、28年度は未着手である熊本・大分の国学について調査を行う予定であった。しかしながら4月に起きた熊本地震によって計画は変更を余儀なくされた。そこで近世後期の柳河藩で行われていた歌合について、その諸相を以下のように口頭発表にまとめた。それらを論文化したものは29年度に刊行予定である。柳河藩では近世後期に藩主立花鑑寛および妻純子は周辺の家臣たちとともに歌合を行い、江戸在住の歌人であった井上文雄(1800-1871)に添削と勝負判定を依頼している。口頭発表1ではそれらの具体的な記録から、近世後期の歌合の実態をあぶり出したものである。従来、近世後期の歌合は文学的な価値が低く、研究するに値しないとされてきたが、大量な資料を研究することでその研究の必要性を明らかにすることができた。 1.亀井森「井上文雄の和歌添削―近世後期柳河藩歌合を中心に―」(第30回九州近世文学研究会口頭発表,於九州大学,平成28(2016)年5月28日)、亀井森「鹿児島大学附属図書館蔵玉里文庫のデジタル化について」(シンポジウム「近世日本の長崎・対馬・薩摩と対外交流―情報共有基盤の構築へ向けて―」,於九州大学,平成28(2016)年9月21日)、3.亀井森「幕末柳河藩の歌合について」(柳川市史歴史講座講演, 於柳川市立図書館,平成28(2016)年10月1日)
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