本研究は九州各地の国学に関する研究について、各文庫の調査を通して学者間の交流を解明しようとするものである。平成31年(令和元年)度は研究の4年目となり、昨年まで調査が手薄であった大分県で調査を行った。 4月には三重県松阪市で行われた鈴屋学会(於本居宣長記念館)で当該研究に関する口頭発表を行った。質疑応答によって研究への理解が深められ、論文作成へとつながった。またそれにあわせて同19日より愛知県西尾市立図書館岩瀬文庫で調査を行った。これによって当該研究における新しい資料を得ることができた。5月には第36回九州近世文学研究会(於九州大学西新プラザ)に出席し、当該研究に関わる口頭発表を拝聴、質疑応答を行った。 9月には第69回西日本国語国文学会熊本大会(於熊本県立大学)において、シンポジウムおよび研究発表に出席した。特に、シンポジウム「震災と国文学・国語学」では当該研究に関わる阿蘇神社学芸員を招き、司会およびコーディネーターを務めた。当該研究における資料保存の方向性について議論を重ねることができた。11月には小浜市立図書館(福井県小浜市)に所蔵される酒井家文庫の伴信友旧蔵書を調査した。当該研究の研究対象である長沢伴雄と密接なつながりを持っていた小浜藩士伴信友が行った『今昔物語集』の研究には長沢伴雄が深く関与していることが判明した。2月には長崎諏訪神社(長崎市上西山町)で調査を行った。当該研究と深い関わりを持つ江戸時代後期の神社資料および国学関係の書籍を多く所蔵するため、非常に有益な調査となった。 3月にはきつき城下町資料館(於大分県杵築市)において近世後期の杵築に神職・歌人・国学者として一家をなした物集高世・高見親子の写本資料の調査を行った。本科研で調査が進んでいなかった大分県の資料調査を行うことで今後の研究への足がかりを作ることができた。
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