本年度当該研究における成果実績は、基礎文検資料の調査収集の進捗の良好さに示されている。国立図書館等の施設において数回に渡る資料収集に当たり、同時に、沖縄県内の各図書館や研究施設において沖縄文学成立に関する文献資料調査を行い、成果を得た。特に世禮国男と山城正忠に関する資料において調査収集が進展した。同時に、沖縄文学成立に深い関連を持つ沖縄学関係資料と沖縄表象に関する思想史及び社会文化史関連基礎資料の調査収集も併行して行い成果を得た。この領域では、特に郷土主義の展開と群集に関する同時代的思想状況についての資料調査収集に関して進展がみられた。 こうした収集作業を踏まえて、次のような口頭発表を行った。1つは、社会文学会大会での「言葉のとり憑きについて」。そして、2つ目は、沖縄芸術大学大学院公開講座での「文学と思想から表象を問い直す 近現代の沖縄を軸に―佐藤惣之助『琉球諸島風物詩集』世禮国男『阿旦のかげ』の比較から」、3つ目は、「沖縄文学における「外国語」表象」(「台湾/満洲/朝鮮の植民主義と文化交渉」国際シンポジウム))である。この3つの発表で検討された沖縄文学成立におけるジェンダー編成や言語意識への考察については、現在論文化を進めており、近く活字化される予定である。 また、関連成果として『沖縄に連なる 思想と運動が出会うところ』(岩波書店)を刊行し、3本の論文を発表した。その詳細は以下の通りである。1.「石牟礼道子の沖縄-「耐えがたいわからなさ」という始まり」」(『現代思想』46(7))、2.「歴史を捲りかえす」(前出『沖縄に連なる』収録)、3「消化しえないものの体内化をめぐってー晩年の岡本恵徳を読む」(同)。以上、研究実績報告とする。
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