前年度までの教科書教材調査の成果を踏まえ、近代以降の日本の国語教育における近世文学教材の位置づけを巡る考察に必要な関連資料文献からの情報収集を行うため、教科書教材及び教育研究雑誌資料(大正期雑誌『国語教育』、『芭蕉研究論稿集成』等)を広範に所蔵する広島県立図書館等への調査(9月)を行った。 次に、計画に従って今年度までに収集した教科書教材データを利用した考察のまとめとして、論文「近世文学作品教材の意義の変化―近現代における国語科教育の古典教材観の背景と課題―」(福岡女子大学国際文理学部紀要『文芸と思想』84、2020.2.)を発表し、刊行した。現代(昭和末~平成期)の高校国語(古文)教科書における近世教材の採用動向の実態について、明治期~昭和戦後・平成期までを通観した視点で、特に「近世文」「文範」意識の明治30年代以降の変化、大正~昭和初期の「現代文」「古文」教材観と現代への影響に注目し、今日的な「古典」教材観の問題点にまで及ぶ総括的な考察を進めたものである。 その他、本研究に拠って得た考察の知見を活かし、8月実施の所属大学の教員免許更新講習「連句と俳諧の文体を読む―古文のレトリックの細部―」(於福岡女子大学、2019.8.3.)に関連資料報告を応用した。また、昨年度から今年度にかけて行った他の日本古典文学および国語教育・文学教育に関する文献資料調査(小城鍋島文庫研究会)、招待講演(2019年度柳川市史歴史講座)、諸研究報告と出版書籍(「小城鍋島文庫蔵書解題稿(四)」佐賀大学教育機構紀要第8号、「目加田さくを先生関係資料紹介」『香椎潟』第60号、柳川資料集成第六集『紀行と実録』柳川市、等)の刊行等に、その成果を反映させることができた。
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