近代以降の国語教育史の中で「古典の定番教材」は一見固定化しつつあるように見えるが、近現代から現在に至るまで、質的には著しく変化を遂げている。何を「古文」の教材とし、それをいかに教えるか、という問題は、所謂実務的国語力の要請だけではない、言語文化の「知」の教育そのものの意義の問い直しとなる。近現代の「古典文学観」に基づく日本近世文学作品の「教材化」の動向の研究のねらいは、主体的にテキストに向かう学習者と指導者にとっての教材の意義、さらには将来の国語教育における「古典」や「文学作品」教材の有効性を考えることにある。
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