2018年度は、2016年度から継続して、共同研究者らとの定期的な研究会を開催した。 7月21日に小樽商科大学を会場に開催された「2018年度日本比較文学会北海道大会」において、特別企画「日韓芸術の媒介者たちー近代における文化人の活動を通してー」を企画提案し、それに向けた研究活動を中心に行なった。この特別企画では、海外研究協力者である韓国世宗大学教授・韓国比較文学会会長で柳宗悦研究者である李秉鎮氏を招聘し講演を行い、その後、研究代表者(梶谷崇)、共同研究者(李賢ジュン)、研究協力者(韓然善)が登壇して報告とパネルディスカッションを行なった。 李秉鎮氏の講演を通して、柳宗悦の民藝運動が日韓両国にまたがって展開された様が解説されると同時に英国ウィリアム・モリスや現代生活美学との関連性に繋げ、柳宗悦の思想の近代性を解き明かした。パネルディスカッションでは、梶谷が柳兼子の音楽活動を、韓は村山知義の演劇活動を、李は崔承喜の舞踊というように多様な文化芸術活動を取り上げ、日韓両国を横断的に活動した文化人たちの思想や社会運動を分析した。そこから導き出されたのは、現代における日韓近代文化史にしばしば見られる支配/被支配の関係性とは必ずしも直結しない文化人たちの複雑な人的、思想的関係性のあり様であった。この特集を踏まえ、発展させる形で、2019年6月に開催される日本比較文学会全国大会にシンポジウム「近代日朝文化交流の再検討ーー近代と伝統、都市と地方」を企画提案し、採択された。 また、11月12日に韓国忠南大学校において講演会の講師として招聘された。この講演会は「大学人文力量強化日本地域専門家招請講演」という位置付けで開催されたものであり、本研究テーマに関連させ「柳宗悦・民藝思想から考える日韓文化交流ー韓国と日本を結ぶデザイン思想」という題目で学生・教員を対象に講演を行なった。
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