研究課題/領域番号 |
16K02415
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
平林 香織 岩手医科大学, 教養教育センター, 教授 (50300132)
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研究分担者 |
神作 研一 国文学研究資料館, 研究部, 教授 (30267893)
伊藤 善隆 立正大学, 文学部, 准教授 (30287940)
志立 正知 秋田大学, 教育文化学部, 教授 (70248722)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 大名 / 東北諸藩 / 文理融合 / 和歌 / 俳諧 / 歴史 / 地理 / 医学 |
研究実績の概要 |
江戸後期の諸藩の思想的文化的基盤における文理融合理念の展開の基礎調査として、東北諸藩における医育の実態(盛岡藩)、稽古思想の実態(庄内藩)、系譜の言説形成(津軽藩)、漢学思想の影響(時代背景)、俳画の多面性(東北諸藩)の資料調査と整理を行った。その結果、諸藩における歴史学、地理学、国学、漢学、国文学というさまざまな学問の足跡をたどることができた。 研究代表者平林は、盛岡藩の藩校における医学教育の系譜の調査成果を『岩手医科大学120周年記念誌』の創立前史部分に反映させた。また、江戸時代の地理学的な思想や地図や地誌の出版の隆盛が浮世草子の短篇にも及んでいることを確認した。さらに、庄内藩主と堂上歌人との書簡のやりとりを整理することによって、和歌・俳諧の稽古意識が国づくりの思想と結びついているという仮説をたてた。研究分担者志立は、北奥羽諸大名や津軽藩の系譜の言説の実態を調査・考究することによって、〈家伝〉という神話形成が諸藩のアイデンティティの確立に不可欠であることを明らかにした。研究分担者伊藤は、江戸座俳人や地方の俳人が、藩主の俳諧趣味や漢学趣味と双方向的な関係性をもって文化形成の一翼をになっていることを明らかにした。 平成28年8月1日に国文学研究資料館において「大名文化圏研究の地平を拓くためのワークショップ」を開催し、研究分担者神作が「和歌の展開」、伊藤と連携研究者稲葉が「俳諧の展開」、志立が「歴史の創出」、連携研究者真島が「地誌の展開」、平林が「文理融合思想」について研究構想を提示し、ディスカッションを行った。 平林と稲葉は、庄内藩への調査を平成28年12月10日に行った(鶴岡市郷土資料館及び致道博物館)。また、平林は平成28年12月11日に仙台藩の和歌資料調査を行った(宮城県図書館伊達文庫)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度として、各人が、東北諸藩を対象としてそれぞれの領域において資料調査を行ったので、おおむね順調といえる。また、調査の成果をさまざまなかたちの報告書や論文にまとめており、今後の研究の足がかりを形成することができた。 さらにメンバーが一同に会して「大名文化圏研究の地平を拓くためのワークショップ」と行い、研究の現状と課題を共有し、問題を掘り下げることで、それぞれの担当領域の問題点を確認した。その結果、大名文化圏における文理融合思想の系譜を、従来の文学史が等閑視していたこと、今後、その実態を明らかにすることの重要性を再認識することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は実際に鶴岡市に赴き、鶴岡郷土資料館や致道博物館に伝来する文理融合思想と文芸活動を接続する資料の調査を行い、昨年度のワークショップで立てた仮説や見通しの検証を行う。庄内藩の資料は、多方面にわたっており、また、比較的まとまりよく整理・保存されているので、その全体像を明らかにすることで、大名文化圏における文理融合思想の展開のモデルケースとすることが可能である。それをもとに、南部藩、秋田藩、津軽藩など東北諸藩の資料を紐付けすることで、東北の全体像を把握することが可能となるはずである。東北の全体像を、西海道諸藩に敷衍して考えることで、日本全体の江戸時代後期の文理融合思想の展開と諸藩の文芸活動の関わりを明らかにすることができるだろう。 最終年度に出版予定の『日本的知の再構築―東北諸藩からみえてくる国と文学』(仮題)の編集方針・内容構成・執筆分担についての計画をたてる必要がある。そのことを見通した上で、各人の調査・研究の成果を、学術雑誌、勤務先の紀要、各種報告書等に公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
庄内藩および仙台藩の資料を調査するための旅費を、新潟大学フェロー錦仁研究代表による別科研(研究課題番号26370229「東北地方諸藩の和歌活動と国学者の和歌思想との関係を解明する新研究」)により支給していただいたため、旅費経費を軽減することができたから。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度9月初旬に鶴岡郷土資料館と致道博物館での研究調査を予定しており、研究代表者及び連携研究者の旅費(それぞれ盛岡鶴岡・東京鶴岡往復の運賃と宿泊費)として使用する。
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