本研究は、2016~2019年度の4年間で行う計画であったが、研究代表者の佐藤が途中で体調を崩したため、1年間の延長を申し出て、5年間で完了することになった。ここでは、2020年度と5年間の研究概要を、次の4点に分けて記す。 1.宝永期後半から正徳期にかけての俳書を悉皆的に調査し、入集者と入集状況を「俳人大観」として一覧科することは、この5年間で順調に作業が進み、『近世文芸研究と評論』誌上にその成果を掲載した。2020年度もこれを行い、ほぼすべての作業を終えた。 2.各資料の分析を通して人的交流の実態を把握することに関しては、『東風流』という俳書を共同研究の形で翻刻・分析・考察し、『東風流 宝暦俳書の翻刻と研究』(世音社、2021年3月)の中にその成果をまとめた。 3.翻刻と注釈の作業を推進することに関しては、上記の『東風流 宝暦俳書の翻刻と研究』を上梓することで、その目的を果たすことができた。また、このほか、5年間で4点の連句作品を評釈し、『近世文芸研究と評論』誌上にその成果を掲載した。 4.都市系俳諧と地方系俳諧の関係を考えることは、折に触れて研究者間で話し合い、上記の『東風流 宝暦俳書の翻刻と研究』にその成果を盛り込むことができた。とくに研究代表者の佐藤は、付合手法の変遷を探る作業を通じて、都市系・地方系に共通するものとして、芭蕉流付合手法が解体していくさまを発見することになり、新たな俳諧史を切り開く一つの視点としてこれを位置づけるに至った。以上の通り、予定通りにほぼすべての作業を終え、十分な成果を上げることができた。
|