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2017 年度 実施状況報告書

自筆資料調査および実地踏査による森敦文学の総合的研究

研究課題

研究課題/領域番号 16K02417
研究機関國學院大學

研究代表者

井上 明芳  國學院大學, 文学部, 准教授 (90614264)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード森敦 / 体験 / デジタル技術
研究実績の概要

本年度は、当初の計画通り昨年に引き続き、森敦「われ逝くもののごとく」の生成過程の調査、翻刻と作品舞台である庄内平野の現地調査、資料収集を行った。その成果について、12月9日(土)に國學院大學にて森敦研究会を開催し、披露した。
本研究会は、物語を〈体験〉するということをテーマとし、上記成果を報告するだけでなく、報告デジタル技術を駆使する方法を考案した試みを行った。森敦の文学理論である「意味の変容」に述べられる内部/外部の理論を体験的に表すことを目指した。具体的には、庄内平野の立体地図に、「意味の変容」の理論と「われ逝くもののごとく」の物語内容とをプロジェクション・マッピングで実現し、視覚的体験を実現した。また、スマートグラスを用いて、現地調査で収集した現地映像を背景にし、グラスに映る部分に物語場面を影絵で演出し、朗読を重ねて、物語を身体的に体験できる方法を提示した。さらに、前年に引き続き講師として、黒田大河氏、中村三春氏のほか、さらに塚田修一氏を新たにお迎えして、「われ逝くもののごとく」の〈体験〉性について、シンポジウムを行った。構造的な視点や物語の引用の視点、社会学的視点を交え、本物語の解釈を超えて物語を〈体験〉する可能性を模索した。最後には森富子氏による森敦の創作秘話についてのご講演を賜った。以上の内容から、森敦文学がたんなる読みの可能性を超えて、〈体験〉するという身体を使って実感できることを示し得た。
これは、文学研究の可能性をさらに開くことにつながると思われる。とりわけデジタル技術の応用は、研究面だけではなく、講義や演習などで活用でき、教育的な可能性も十分に見出される。文学作品の解釈が説明に止まらず、解釈者の表現になること、アクティブ・ラーニングが重視される今日、森敦文学の可能性はそれに応え得るであろう。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

「われ逝くもののごとく」の自筆原稿の調査、翻刻は予定通り進んでおり、生成過程の公開の方法の実際的な検討に入ることができている。森敦研究会にてインターネットを通じてwebサイトを開設して公開する方法を具体的に示すこともできた。むろん、検討の余地はあるが、予定通り進めていきたい。
また、現地調査も順調に進み、舞台となった地区も撮影が進んでいる、ただし、土砂崩れのため、行くことができない場所(十二滝など)があるため、次年度に期したい。
森敦研究の可能性の模索という点は、スマートグラスやプロジェクション・マッピングなどのデジタル技術の駆使によって、想定以上の成果を得ている。この点は引き続き、追求していきたい。

今後の研究の推進方策

今後の研究の推進方策については、これまで通り「われ逝くもののごとく」の自筆原稿の調査。翻刻を行う。これには大学院生や学部生にも参加してもらう予定である。自筆原稿を見る機会は極めて貴重であり、作品が成立する過程を追体験することは教育的な面で重要な意味を持っている。
また、現地調査も従来通り行う。具体的には夏季休暇を利用するが、土砂崩れで立ち入れない十二滝などの復旧を待ちたい。可能ならば、復旧後調査に行く予定である。こうして得られた調査資料と生成過程の資料、注釈などを合わせて、webサイトを開設し、広く公開する。それによって本研究の当初の目的を達成する予定である。
さらに上記サイトを鶴岡市と連携しながら、地域の活性化につながるようなかたちにしたいと考えている。

次年度使用額が生じた理由

当初の計画通りの使用であったが、研究会の実施が大学の行事や校務と重なってしまい、実施できなかったため、謝金に予定していた分が残金として残ってしまった。とりわけ年度末に生じたが、次年度に繰り越すことで、謝金として使用する予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2018 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] 森敦「われ逝くもののごとく」の特性-物語を語り、体験する-2018

    • 著者名/発表者名
      井上明芳
    • 雑誌名

      解釈

      巻: 第64第1・2号 ページ: 39-47

    • 査読あり
  • [備考] 第2回森敦研究会 森敦文学研究 物語を〈体験〉する

    • URL

      http://pr.kokugakuin.ac.jp/uncategorized/2017/12/09/203809/

URL: 

公開日: 2018-12-17  

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