研究課題/領域番号 |
16K02421
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
大森 英実 (木内英実) 東京都市大学, 人間科学部, 准教授 (70331501)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 文学資料のデジタル化 / 文学資料目録 / 外国語資料の日本語翻訳 / 作家直筆資料 |
研究実績の概要 |
平成29年3月末に静岡市中勘助文学記念館敷地内に同市所蔵中勘助関係資料収蔵庫が完成、建物内の化学物質除去を行った後、平成29年10月から平成30年3月にかけて、静岡市埋蔵文化財センターに所蔵される中勘助関係資料が移動する関係上、平成28年4月より現在に至るまで基本的に同資料の貸出・閲覧が中止状況にある。その結果、予定していた同資料内の作家の直筆資料の研究調査を静岡市で行うことができなかった。 静岡市から提供された中勘助『銀の匙』韓国語資料の日本語翻訳を池田美愛氏に依頼した。同資料日本語訳から得た新たな知見について平成28年10月国際啄木学会東京支部会にて「中勘助の『銀の匙』の諸点」の題名で研究発表し、更に平成29年2月には世田谷文学館友の会主催講演会にて「『銀の匙』に描かれた童心の背景」との題名で講演を行った。 また元国文学研究資料館司書である鈴木一正氏の協力により、国内の文学館が作成した複数の文学資料目録を比較検討することを通して、静岡市所蔵中勘助関係資料目録を研究者にとってより使いやすく整備するための具体的方法を模索した。鈴木氏の提言を受け、書名は叢書名を優先してとるなどの大まかな法則性を定め、国立国会図書館蔵書の書誌情報と比較対照することを通して、同目録の書名・著者名等を修正した。作業を継続し、静岡市所蔵中勘助関係資料目録A書籍に関しては、奥付の確認と日本十進分類法により分類番号の付与を残すところである。 静岡市担当課の協力により、 平成29年5月には奥付の確認作業を実施する予定であり、平成30年前期には静岡市所蔵中勘助関係資料目録A図書に関し修正を完了する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究実績の概要」に記した通り、静岡市側の事情により同市所蔵中勘助関係資料内、中勘助直筆資料のデジタル化ができない状況が平成28年4月より現在に至るまで継続している。平成29年5月時点での静岡市担当課の感触として、図書資料の閲覧について前向きに協力してくださっていることから、今後、閲覧資料を図書資料から作家直筆資料へ拡大する方向性を模索し、現地における中勘助直筆資料デジタル化調査研究が進むことを期待する。 静岡市により同市所蔵中勘助関係資料内から提供された外国語資料の日本語翻訳委託や日本語訳から得た新たな知見の公表に関しては、学会発表や講演などを通して円滑に行われた。委託した池田氏が韓国語を母国語とする日本文学研究者であることから、日本文学の専門用語を文脈上、正確に翻訳しそのニュアンスを伝えてくれたことに他ならない。国際啄木学会東京支部会と世田谷文学館友の会が研究発表の場を与えてくださり、研究協力してくれたことに感謝の意を表したい。 静岡市所蔵中勘助関係資料目録の整備に関しては、予想通り順調に進捗している。専門家との検討、専門家からの助言に従っての同目録A書籍修正作業は円滑であった。この理由として第一に鈴木氏の目録作成の職能が極めて高いことに加えて研究補助アルバイトの岡崎史氏によるデータ入力が正確であったことなど人的に好条件に恵まれたことが挙げられる。第二に国立国会図書館の蔵書書誌データがオンラインで同時に複数台のPCで確認できる東京都市大学の良好なインターネット環境が挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
静岡市所蔵中勘助関係資料目録の整備を最優先する。現在、その中でも大部を占めるA書籍の修正作業がほぼ完了したので、順次、国立国会図書館蔵書書誌データ及び国内の文学館作成目録との照合が比較的容易なSA著作・刊行物、E作品の目録修正に着手していく。続いてSB書簡・はがき類、Bはがき、SC映像・音声資料、G切抜き類、C写真類、D遺品類など初出や内容の確定を示す客観的データ照合が困難もしくは現物確認が必要な資料の目録修正に着手する。 今後の作業過程で現物確認が必須と思われるので、平成29年5月中に静岡市担当課に昨年度の研究成果物を示すことに併せて研究協力を改めて仰ぐ予定である。2か月1回程度、静岡市中勘助文学記念館において作業し、目録修正作業は今まで通り東京都市大学木内研究室において週1、2日取り組む予定である。鈴木氏に今まで通り月1、2回お越しいただき目録修正作業の指導を仰ぐ。 木内の博士論文の公刊が今年9月に予定されているので、その巻末に静岡市所蔵中勘助関係資料目録中修正完了したA書籍データを掲載し、広く公開する。 所属学会である昭和文学会・社会文学会において中勘助直筆資料に関する研究発表を行い、例年の東京都市大学人間科学部研究紀要だけでなく学会誌発表論文に投稿、発表することを今年度の挑戦事項とする。 平成28年度に世田谷文学館及び同館友の会との協力関係を築くことができたので、世田谷文学館もしくは東京都市大学夢キャンパスを会場とした、世田谷文学館及び静岡市所蔵中勘助関係資料の展覧会を平成30年度に実現できるよう企画を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
F-7-1書式「研究業績の概要」「現在までの進捗状況(理由)」に記した通り、本研究が対象とする中勘助関係資料を保管する静岡市側の事情(平成28年11月着工、平成29年3月末完成、中勘助文学記念館敷地内に同市所蔵中勘助関係資料収蔵庫建設)に伴い、現地での研究が進展しなかったことに起因する。 つまり木内が現地訪問時に使用するはずだった旅費、現地で雇用予定だった人員2名の人件費及び謝金、現地で使用予定だった物品(資料のデジタル化・整理に使用するOPPフィルム袋・AFプロテクト紙)の予算を全く使用できなかったことを理由とする。
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次年度使用額の使用計画 |
F-7-1書式「今後の研究の推進方策」に記した通り、平成29年5月に静岡市担当課と再度協議し、早期に同市所蔵中勘助関係資料の現地での調査研究が可能となるよう要請する予定である。確実に調査研究が再開されるのは平成30年3月末からだが、今後、現地での調査研究が再開されることに伴い、未使用の予算を使用する予定である。
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