研究実績の概要 |
本研究は、近・現代の東南アジア地域への日本語書物の流通の実態を解明し、その果たした役割を明らかにすることを目的とする。同地域に遺された日本語資料の調査を進め、これまでにインドネシア国立図書館、及びベトナム社会科学院社会情報研究所に戦前・戦中の日本語資料が多数保管されていることを確認し、それぞれの所蔵目録を作成・公開するとともに、同資料群の性質や役割について研究・発表を行ってきた。 平成30年度も、未調査地域の調査、すでに調査している資料群の整備、分析、これらに基づいた研究発表を進めた。すなわち、未調査の地域としてはラオスにおける日本語資料の調査を実施した。国際交流基金アジアセンターのラオス支所に協力を得て、ラオス国立図書館、ラオス国立大学、及びラオス日本センター(LJI)において、日本語資料の所蔵状況を調査した。 また、これまでに発見した資料群については、ベトナム社会科学院の約11,000点の所蔵資料の目録化を終了したため、同機関とその情報を共有、整備するとともに、同資料についての報告をベトナムでの国際会議で行った。また、これら資料についての分析をもとに論文を公表した。これら東南アジア各地に遺された戦前・戦中の日本語資料群については、戦前・戦中の日本の対外文化戦略が大きくかかわっている。このため、研究の重点を、送られた資料群のみならず、資料を送り出していった日本の対外文化戦略へと移行させていく必要が生じてきた。
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