研究課題/領域番号 |
16K02429
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研究機関 | 青森公立大学 |
研究代表者 |
横手 一彦 青森公立大学, 経営経済学部, 教授 (60240199)
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研究分担者 |
野坂 昭雄 山口大学, 人文学部, 准教授 (20331936)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 長崎原爆 / 長崎(浦上)原爆 / 長崎原爆映像資料 / 長崎被ばく映像記録 / 被ばく視覚資料 / 旧日本映画社撮影 / 長崎の原爆文学 |
研究実績の概要 |
未公開の被ばく映像資料から、当該研究利用に限定する4K映像資料を作成した(一昨年度)。本研究の計画作成段階では、受像機を含め、今日のような4K映像の一般的な普及は想定していなかった。その意味で、研究実績の一部は、既に陳腐化しているといえる。しかし、4K映像の関連コンテンツは乏しく、4K映像資料自体の唯一性も失われていない。被ばく後の実写を今日的にあと付ける本研究は、その有用性を保持していると考える。 当該課題遂行との限定を付した利用許諾を得て、その4K映像資料から約300点の画像を切取り、それらを約150点に絞り込んだ。それらの撮影地点などを推定し、それに基づいて長崎市内を実査し、部分的に現状を確認した。それらの被ばく画像資料をあと付けた。 切取り画像に対応する、あるいは対応すると推定する、現在の長崎市内の各地点を撮影した。総数は約2000点余りである。それらを絞り込み、74年前の長崎市浦上地区(主に)と、現在の長崎市浦上地区(主に)とを、一点ずつ対比する資料に整えた。加えて、画像一点々々に、その最大幅で、また限定的に対応する文字資料(被ばく証言)や先行研究文献等を求め、データ化し、切取り画像資料の場面々々にあてはめた。それらの作業は未だ半ばである。 他分野の関連資料から主な被写体物を史的に位置付けた(例―戦前の長崎県庁舎)。それらの作業も未だ半ばである。 映像資料、画像資料、関連する文字資料等。性格の異なる媒体や資料等を重ね合わせ、74年前の被ばく後の実相の一端に立ち返り、被ばくの実態を再確認する資料集制作に本研究の有意性がある。74年前の長崎(浦上)原爆は、再現や復元が可能になるという性格のものではない。74年を経ることで、個人の証言等に依拠して被ばく後を構想する手法には、幾つかの困難や限界が生じている。そのような現状に対して、本研究の果たしうる役割があると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年度は、平成28年度及び平成29年の遅れを取り戻し、それまでの研究内容を部分的に点検し、その不足等を補った。それらの積み重ねから本研究を進展させることに努めた。 直近の2年間の遅滞は、本研究の計画作成段階において想定していなかった2つの要因に主に拠るものである(前年度に報告済み)。それらの端緒が、研究主担者の、研究姿勢に派生した事柄ではないとしても、当該研究が遅滞している責は、研究主担者にある。未だに、その遅滞を挽回する段階に至っていないとの判断から、「やや遅れている」と、本研究の進展度合いを自己評価した。 前年度も、同じく「やや遅れている」との自己評価であった。その評価区分は同じであるが、30年度は、被ばく4K映像資料を切取り、被ばく画像資料を作成した。また被ばく画像資料に相当すると推定する現在の長崎市内の地点々々を撮影し、70年余りの変化を視覚的にも明確化することに努めた。加えて、被ばく画像資料に対応する文字資料を収集し、撮影の際の聞き書き調査等を含めてテータ化し、それらを画像資料毎に並立させ、整序した。 それらによって、個別・具体的に被ばくの実際を明示し、被ばく資料として自立することを求めた。そのような作業や分析を量的に積み重ねことに努め、そのことから、被ばく後の極限的な情況にあった〈人〉の在り方に接近する資料集の作成という、最終年度の果物作成へと進展する。 そのため、29年度よりも本研究の内実は進展しているのであるが、量的な蓄積が十分ではない。そのような現状から、「おおむね順調に進展している」と自己評価する段階に至っていないとみなし、一昨年度と同じ「やや遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
切取り画像約150点に、現在の長崎市浦上地区(主に)の画像を重ね合わせる作業を終えておらず、前年度に引き続いてこの作業と分析を行う。今年度の前期に、その完遂を目指す。 また、部分的な被ばく画像資料の入れ替えを行う。それらの作業のために、被ばく画像の切取り直しや、現在の長崎市内の地点々々の再撮影等を行う必要があると考える。 また被ばく映像資料や、被ばく画像資料に関連する文字資料を収集し、被写体物の史的位置付けなどを行う。それらの文字資料は、映像資料や画像資料を補完する記録であり、同時に、それら資料と異なる位置から、それらの媒体資料に〈人〉の在り方に関わる深度を加えるものであると考える。 映像資料、画像資料、文字資料。それら三資料が同一方向の下に集約し、それら三資料の総体から、被ばくした〈人〉の現実の一端を記録し、被ばくの実態を際立たせる資料集を制作するとの目論みである。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究が計画段階より進展していないため、研究計画段階の使用額を満たすことが出来なかった。本年度は、研究計画の最終年度であり、これまでの成果を冊子形態に集約する予定である。最終年度の研究活動の経費や成果物作成のために残額を使用する。
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