研究課題/領域番号 |
16K02435
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研究機関 | 清泉女子大学 |
研究代表者 |
大石 房子 (金田房子) 清泉女子大学, 付置研究所, 客員所員 (80746462)
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研究分担者 |
玉城 司 清泉女学院大学, 人間学部, 客員教授 (20410441)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 日本近世文学 / 俳諧 / 地域文化 / 一茶 / 鳳朗 |
研究実績の概要 |
本研究は、俳諧が地域文化に果たした役割を明らかにするために、綾足・鳳朗・一茶という諸国を巡った職業俳諧師の活動(a)と、在村の地方俳人の活動(b)という二つの方向から研究を行っている。 (a)については、5月21日に第一回研究会を開き、それぞれの担当を再確認の上、本年度の調査の進め方について討議した。鳳朗を担当する金田(大石)房子〈研究代表者〉は、7月11~12日に天理大学附属図書館で、同館の綿屋文庫のみ所蔵される資料を可能な限り網羅的に閲覧、その記載から鳳朗が「対竹」から「鶯笠」に改号して熊本から江戸に居を移した時期を確定した。玉城司〈研究分担者〉は、一茶・鳳朗の新出資料を発掘するとともに、一茶に関する研究成果を地域の文化活動で講演し、アウトリーチ活動を行った。これは講演録としてまとめられている。紅林健志〈研究協力者〉は、10月1~2日に行った群馬県立文書館の調査で発見された、前橋の松井素輪と綾足(凉袋)との親密な交流を示す膨大な資料について、現在考証を続けており、次年度の口頭発表を目指している。 (b)については、8月3日と11月5日に「『矢口丹波正日記』を読む会」を開き、解読を進めるとともに内容の検討を行っている。また、金田は、高崎の矢口一彡の文化活動について7月26日に清泉女子大学人文科学研究所研究懇話会で発表し、同研究所紀要にまとめた。また、12月1日には、中国重慶の四川外国語大学における講演会で、庶民文芸としての俳諧のあり方について、発見資料から講演を行った。 2月10日に第二回研究会を開いた。これは、村方史料を研究する歴史分野の講師を招いて公開して行った。歴史学で研究されている在村の俳諧活動について詳細なレクチュアを受け新たな視点を得ることができ、文学と歴史学とのそれぞれの特性を生かした協力の重要性を再認識することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
鳳朗と一茶の関連資料については、順調に調査・資料収集が進んでいる。群馬県立文書館の調査では、予想をはるかに上回る、素輪・綾足に関する多くの重要な資料を発見することができた。また、調査した資料の精査も各々進めており、伝記などについて新しい所見を得るとともに、資料を用いて講演活動を行い、講演録や論文としてまとめている。『矢口丹波正日記』についても、日記の性格についておおよそ把握することができたので、次は特記事項の抜き出しへと進めて行く予定である。 当初予定した中で、鳳朗の出身地熊本の調査は地震による文書館の閉館のため本年度は中止しせざるを得なかった。その間、鳳朗の中年期以降の活動の調査を優先して進めているため、熊本の調査は次々年度以降に行う予定である。綾足の出身地弘前の調査は、群馬で多くの資料が発見されたため、当面必要でないと判断し行わなかった。一茶の連句解読にはやや遅れがある。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の方針を概ね継続する。 金田は、引き続き天理大学附属図書館や国文学研究資料館所蔵のマイクロフィルムの俳書から、鳳朗作品の拾い出しや活動の跡づけを行ってゆく。玉城は、一茶資料の調査にあたる。紅林は、群馬県立文書館で発見された資料を中心に、北関東における凉袋の俳諧活動を明らかにすることを目指す。 全員での調査は、意見交換と若手(研究協力者・時田紗緒里〈日本女子大学大学院生〉)へのレクチュアを兼ね、訪問先としては新潟県立文書館を予定している。資料の所蔵状況については、既に予備調査を進めている。他に、鳳朗の足跡が予想される三島市立図書館等の調査を行いたい。 『矢口丹波正日記』については各自解読と特記事項の抽出を進め、「『矢口丹波正日記』を読む会」を開いて報告し、情報を共有する。 年二回の研究会を行う。一回目は当該年度の具体的な計画の打ち合わせと、それぞれの進捗状況の報告。第二回は研究発表会。テーマを決めて講師を招くなどし、公開して行うことを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた、鳳朗の出身地熊本への調査を当該機関の休館のために中止。大垣・前橋といった比較的近距離の調査に切り替えたため。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度予定していた熊本県立図書館の調査を次々年度行うために、繰越金が必要である。
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