最終年度においても,ウォルター・ペイターとマックス・ビアボウムの作品を中心としたテクスト分析を進めた。また,日本ペイター協会,日本ワイルド協会,日本ヴィクトリア朝文化研究学会等,本研究課題に関わる代表的学会に参加し,最新の研究成果についての知見を得ると同時に,後期ヴィクトリア朝イギリスにおけるジェンダーと消費文化との相互関係について活発な意見を交換することができた。 大阪市立大学野末紀之教授の研究グループと9月と2月の2回にわたって研究交流を行い,そこではマックス・ビアボウムにおけるジェンダー表象と消費文化との関係について研究発表を行った。加えて,2019年3月には,本研究課題における中心作家のひとりであるマックス・ビアボウムのラドヤード・キプリングに対する評価をめぐり,キプリング協会の全国大会において「キプリングを嫌った男―マックス・ビアボウム」と題した口頭発表を行った。 2018年8月には『北海道教育大学紀要』に投稿していた論文「後期ヴィクトリア朝イギリスにおける人工美とエロティシズム―ジョン・グレイの「理髪師」をめぐって―」が刊行された。本論文は,世紀末のマイナー詩人のひとりジョン・グレイの作品を対象に,美の奉仕者と創造者という理髪師の役割や、そこに現れた唯美主義的な性的幻想を論じつつ,ファッションとセクシュアリティの相互関係について考察したものである。また2019年3月には『ペイター論集』に「マックス・ビアボウム「ディミニュエンド」翻訳と注釈」が掲載された。これはビアボウムの代表的作品のひとつと考えられながらも,これまで日本語への完訳がなかったものであり,今後の評価が期待される。 最終年度においても,ロンドン大学図書館や大英図書館において資料収集を行った。現在,その成果に基づいてあらたな論文執筆を進めつつある。これらについても漸次発表を予定している。
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