ウェールズ英語文学について多角的な研究を推進し、その成果の発表を行った。4月26・27日には、イギリスのRaymond Williams Societyの年次大会に参加し、ウェールズ出身の作家Raymond Williamsのエコロジーをめぐる思考を、日本のアニメ監督である宮崎駿およびカール・マルクスの思想と比較する研究発表を行った。この研究発表はいまだ活字化はされていないが、現在ウェールズの研究者(およびニュージーランドとブラジルの研究者)と共に進めているRaymond Williamsに関する共著の研究書に所収する予定である。 9月にはウェールズから研究者(Swansea大学のDaniel G. WilliamsとSteve Thompson)を日本に招いて炭坑とその文化、そして障害をめぐる連続シンポジウムを企画・運営し参加した。この研究者たちとは、2020年度にウェールズで、炭坑美術をめぐるドキュメンタリー上映会兼シンポジウムを開催すべく合意していたが、現在新型コロナウイルス感染症の影響でその計画は中断している。 同時に、日本でのウェールズ文学紹介を進めるために、ウェールズ英語文学の短編を集め、翻訳する企画を進捗させた。リース・デイヴィス、グウィン・トマス、マージアッド・エヴァンズ、ロン・ベリー、レイチェル・トレザイスの短編を共訳者とともに翻訳し、『暗い世界──ウェールズ短編集』として2020年7月に堀之内出版より出版予定である。この翻訳をするために、本研究課題の補助金を利用して20世紀から21世紀のウェールズ文学についての文献研究を存分に進めることができた。
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