本研究は、近年、注目されてきている、学際的・分野横断的ライフ・ライティングの枠組みの中で、従来の伝統的な伝記とは異なる「メタバイオグラフィー」を 系譜的に研究することを主目的としている。初年度(平成28年度)は「メタバ イオグラフィー」の定義、すなわち、「ジャンルが曖昧である」、「ファク トとフィク ションの境界が曖昧である」、「バイオグラフィーを書くという行為について自己言及的である」、「バイオグラフィーの対象 よりバイオグ ラフィーの著者についてより多くが明らかにされる」という特徴を有する―を提示し、平成29年度はその定義を踏まえて、ヴァージニア・ウルフ『フラッシュ』など、個別の「メタバイオグラフィカル・フィ クション」の考察を進めたが、それらの研究成果を踏まえ、最終年度は「メタバイオグラフィー」および「メタバイオグラフィカル・フィクション」をライフ・ライティングの系譜の中に位置づけ、さらに「バイオフィクション」へと発展する可能性を明らかにした。さらに、夏期休暇には、約二週間ほど、オックス フォード大学附属図書館(英国)において、研究テーマに関連する資料収集を集中的に行うとともに、出張期間中に行われる二つの学会“Bronte 200:Emily Bronte Bicentenary Conference”(ヨーク)と“The Book as Cure: Bibliotherapy and Literary Caregiving from the First World War to the Present”(ロンドン)に出席し、最新の情報収集と出席者との意見交換を行った。国内では、日本英文学会第90回全国大会に出席し、英米文学の分野における最新情報の収集と意見交換を行った。
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