研究課題/領域番号 |
16K02449
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
芦津 かおり 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (30340425)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Hamlet / adaptation / Japan / rewriting |
研究実績の概要 |
本研究は、日本で生まれたシェイクスピア四大悲劇の翻案作品を対象とするものであるが、年限内に四大悲劇の翻案を網羅的に扱うことは非現実的である。そのため28年度は、戦後日本におけるグローバル化とノスタルジーのはざまでの「書き換え」に焦点を合わせた。 堤春恵の『仮名手本ハムレット』の考察においては、同作品が『ハムレット』および日本の同悲劇受容の歴史を「書き換え」ることにより、演劇のグローバル化が進む二〇世紀末の日本において、歌舞伎的伝統へのノスタルジアを込めた時代諷刺を行っている点を確認した。 さらに、同じく二〇世紀末に生まれた宗片邦義の『ハムレット』能化の試みもまた、演劇のグローバリズム隆盛と日本古典へのノスタルジアのはざまで生まれた時代の作品であることを指摘しつつ、とくに同作品のキャッチフレーズともいえる “To be or not to be, is no longer the question”という第四独白の「書き換え」がもつ意義を、『ハムレット』批評という文脈において、さらに二〇世紀末日本のシェイクスピア受容という文脈において論証した。この論考は英語論文として執筆し、現在投稿の準備をしている。 いずれの研究においても、日本が一定の国際的地位をえて「西洋コンプレックス」を克服した後に、西洋追随の歴史を反省しつつ「失われた」伝統を懐かしむ動きが生じる一方で、日本の「伝統文化」をグローバルな演劇市場に戦略として利用するという相矛盾した傾向を指摘することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に完成を予定していた研究については、順調にこなすことができたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに行ってきた『ハムレット』翻案作品における「書き換え」メカニズム解明の完成のために、小林秀雄の短編「おふぇりあ遺文」の個別研究を行うとともに、集大成としての研究書を完成させたい。 また、欧化熱の高まった1880年代以降の時代に目を移し、江戸的価値と文学伝統を引きずる作家たちが、「西洋芝居」の提示する新しい価値や文学伝統とどのように向き合ったかの考察にも着手したい。具体的には、悲劇『オセロー』の二つの翻案①宇田川文海『坂東武者』と②条野採菊『痘痕伝七郎』の分析を開始する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文の英語校閲料として予定していたのだが、校閲を受ける段階まで至らなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の英語論文の校閲料として使用する予定である。
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