研究課題/領域番号 |
16K02449
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
芦津 かおり 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (30340425)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | シェイクスピア / 翻案 / 悲劇 / 日本 / 受容 / ハムレット |
研究実績の概要 |
今年度は、本研究課題の集大成として、京都大学学術出版会より『股倉からみる『ハムレット』―シェイクスピアと日本人』(342頁)を刊行することができた。夏目漱石『吾輩は猫である』から「股倉ごしにシェイクスピアやハムレットを見る」という言葉(概念)を借用し、それを全篇に通底する基本的テーマとして用いながら、日本におけるシェイクスピア受容(とりわけ翻案)の具体的な事例を検証するとともに、本課題を通して調査をすすめてきた外国の受容に関する情報や、総括的議論もあわせて纏めあげることができた。 さらに英国のジャーナルCritical Survey特別号に、本研究課題の主要部分を紹介する内容の英語論文を執筆していたが、その修正作業も終えてぶじに"'Hamlet through your legs': Radical Rewritings of Shakespeare's Tragedy in Japan", Critical Survey, 33.1 (2020), pp. 85-102.として発表された。 また日本文化研究書大衆文化研究プロジェクトからの寄稿依頼を受けて、「ヤマトハムレット七変化」という題の小論を完成させた。すでに受理され、編集作業や図版等の許諾申請作業に移っていると聞いている。この論考も本研究課題の内容を大いに反映するもので、黒澤明の映画や森下裕美の漫画に対する新たな知見を過去の研究成果に加えつつ、<キャラクター>という観点からシェイクスピア悲劇の日本的受容を紹介した。2021年度内にKADOKAWA(角川)から刊行予定の学術書『<キャラクター>と<世界>の大衆文化史』に掲載される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題全体の総括をようやく終えて、集大成としての著書を刊行できたため。ただし、予定されていた国際学会が中止となったため、予算の執行に遅れて生じてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
拙著において掘り下げが足りなかったと思われる箇所(とくに夏目漱石とシェイクスピア悲劇の関係性)を中心として、さらなる追加の研究を行う。とくに漱石の悲劇『オセロー』受容と彼の小説の関係性について分析する予定である。さらに、次に予定している研究課題(シェイクスピアの翻訳について)と本研究課題の接合点を探り、関連性をもたせるべく、「翻案」と「翻訳」という、時として区別の難しい二つの「書き換え」作業に関する先行研究や文献類の収集・分析を開始したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
先送りされた国際学会が、結局のところは非開催となり、旅費の使用が大幅に減少したことが最大の理由である。今年度は、むしろオンライン開催の学会やデータベースをうまく活用することにより、着実に予算を執行しつつ成果を挙げることを目指す。
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