まず昨年度から執筆していた論考「ヤマトハムレット七変化」については、加筆修正を加えたうえ、学術書『<キャラクター>と<世界>の大衆文化史』(KADOKAWA)のなかの一章として出版された。 さらに、夏目漱石がシェイクスピア悲劇『オセロー』を念頭におきつつ、そこにいかに巧みな変奏を加えながら『行人』を作り出したかについて、詳細に分析する研究を進めた。その結果は、7月に行われた日本比較文学会シンポジウム「漱石の股倉のぞきー『オセロー』から『行人』」で口頭にて発表したが、他のパネリストから得た知見も参考にして、現在は加筆修正の作業をすすめている。 さらに、劇団りゅーとぴあの舞台「リア王/ 影法師」(2004年)の学術的オンラインテキストを共同作成する国際研究グループの一員として、週1度の国際会議での編集作業に従事しつつ、それを紹介する英語論文の執筆を進めている。そこでは、りゅーとぴあの舞台が、一方では、能という日本の伝統演劇の様式を活かしつつ、また一方ではシェイクスピア悲劇『リア王』の正統性やエッセンスを維持しながら両者を融合させているかについて、詳細に論じている。この国際共同作業の途中経過はAIDA Scholarly Editions Workshop(2021年12月3-4日)でメンバーに共有されたが、拙論も含めた最終的な成果は、2022年度内に、AIDA Scholarly Editionsとしてオンライン上で出版されることになっている。
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