日本で生まれた、シェイクスピア四大悲劇、特に『ハムレット』の翻案に焦点を合わせ、翻案化の過程ではたらく「書き換え」の メカニズムを体系的に解明した。ある翻案が誕生する際には、多様な要因―翻案者の個人的資質や事情、日本の文化的風土や社会的圧力、日本と西洋・イギリスとの関係性、思想的風潮など―が複雑に作用し合い、せめぎ合いながらテキストを生成する。その結果、翻案作品は、原作に対して複雑な関係や態度(崇拝・模倣・横領・反発・挑戦・揶揄)を示すことになる。本研究は、個別翻案の検証を積み重ね、作品間の比較も交えることで、シェイクスピア悲劇の「日本的」な翻案化プロセスの仕組みを体系的に解き明かした。
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