研究課題/領域番号 |
16K02450
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
吉中 孝志 広島大学, 文学研究科, 教授 (30230775)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 庭 / マーヴェル / ワーズワス / ヴォーン |
研究実績の概要 |
「敵と友」を超える超党派的人間関係が、「庭」という場所によって醸成されるという仮定の下で、「庭」そのものの本源的性質を明らかにするため、ロマン派詩人 William Wordsworth の庭と彼の庭に関わる作品を、Andrew Marvell の「庭」と平行して研究してきたが、その成果の一部として、研究成果公開促進費 (学術図書、採択課題番号17HP5057) を受けて『花を見つめる詩人たち―マーヴェルの庭とワーズワスの庭―』を出版した。 また、この研究書の一部を構成する Henry Vaughan のテクストを考察した箇所には、4月に南ウェールズで行った調査が反映されている。特に Vaughan Colloquium で、Robert Wilcher や Helen Wilcox ら研究者との意見交換を行った成果である。 さらに新たな知見として「敵と友」を超える人間関係は、マーヴェルの、いわゆる「女嫌いの庭」に顕在化しているように、女性という他者を想定することでも構築される可能性があることを調査し始めた。すでにマーヴェルとの間テクスト性を探る上で、Stanley Circle に属する詩人たちの個別のテクストを精査する作業を行っていたが、当該年度は、William Habington (1605-1654) のテクスト、それぞれ1634年に初版、1635年、1640年に増補版が出版された Castara を精読することになった。それは、ハビントンが女性の美徳を定義した散文の中で、自らは明らかな王党派であるにもかかわらず、‘... the next sinod of Ladies condemne this character as an heresie broach by a Precision’と述べて、清教徒らとの価値観の共有を示唆する箇所が見出されたからである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度、当初の計画であった William Davenant に関わる研究成果の纏めができなかった。これは、学術図書出版のための準備時間が想定を超えて必要とされたためである。また、ダヴェナントとの関係で彼の The Tragedy of Albovine を推奨するために詩を書いた William Habington という新たな調査が必要と考えられる人物が判明し、そのための時間を確保するため研究計画を修正したことが理由である。
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今後の研究の推進方策 |
William Davenant に関しては、Madagascar (1638) を、William Habington に関しては、Castara (1640) を、内戦勃発へと向かう国内情勢と絡めながら精査し、彼らとクロムウェル、そしてマーヴェルとの人間関係を調査する。平成30年度の終わりにアメリカで開催される The South-Central Renaissance Conference へ参加し、The Andrew Marvell Society において欧米の研究者らとの意見交換を行い、次年度の同学会での最終成果発表に備えたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
187円の研究書がないため。海外への学会参加費用に充てる。
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