研究課題/領域番号 |
16K02453
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大島 久雄 九州大学, 芸術工学研究院, 准教授 (80203769)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | シェイクスピア / 視覚的受容 / ヴィクトリア朝 / シェイクスピ崇拝 / ラファエロ前派 / シェイクスピア絵画 / 絵入全集 / インターテクスチュアリティ |
研究実績の概要 |
研究プロジェクトの三年目にあたり、これまでの文献研究や昨年度に大英図書館、テート・ギャラリー、ナショナル・ギャラリー、シェイクスピア・インスティテュートで実施したヴィクトリア朝シェイクスピア視覚受容に関する調査・分析の成果を論文化し、The 3rd Biennial Conference of the Asian Shakespeare Association: Shakespeare, Traffics, Tropics (28-30 May 2018/Manila) に参加し、"Panel.6: Selling Shakespeare" において坪内逍遥の全集挿絵に注目して "Shoyo Tsubouchi and His Complete Works of Shakespeare" という題目で研究発表を行った(May 29)。"35th International Conference on Psychology and the Arts" (27 June -1 July 2018/Dubrovnik) に参加し、"Session 8: Shakespeare" においてラファエロ前派によるシェイクスピア絵画を取り上げて "The Pre-Raphaelites' Visual Reception of Shakespeare and Their Victorian Sense of Sight and Psychology" という題目で研究発表を行った。昨年度に日本英文学会九州支部大会にて発表したインターテクスチュアリティ受容研究概要が学会プロシーディングに掲載され、研究発表をもとに執筆した論文「『テンペスト』のジェームズ朝的インターテクスチュアリティ~シェイクスピアと書物~」が日本英文学会『英文学研究』支部統合号Vol.11に掲載された。研究成果の社会還元としては、本学芸術工学部公開講座として近現代演劇に関する市民講座を開催し、その中で本プロジェクト研究の成果を活かしてシェイクスピア劇・シェイクスピア俳優の伝統を紹介した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究成果を国際学会 "The 3rd Biennial Conference of the Asian Shakespeare Association: Shakespeare, Traffics, Tropics (28-30 May 2018/Manila) と "35th International Conference on Psychology and the Arts" (27 June -1 July 2018/Dubrovnik) において発表し、昨年度に日本英文学会九州支部大会にて発表したインターテクスチュアリティ受容研究も概要が学会プロシーディングに掲載され、研究発表をもとに執筆した論文「『テンペスト』のジェームズ朝的インターテクスチュアリティ~シェイクスピアと書物~」が日本英文学会『英文学研究』支部統合号Vol.11に掲載された。これまでの海外研究機関での調査によりシェイクスピア視覚的受容関連資料やヴィクトリア朝視覚的娯楽文化資料、シェイクスピア俳優やシェイクスピア崇拝の伝統に関する "Lives of Shakespearean Actors"(Eureka Press) 等の今後の研究の基礎となる関連文献もそろいつつある。今年度は近現代演劇に関する公開講座を開催し、その中で本プロジェクト研究の成果を活かしてシェイクスピア劇・シェイクスピア俳優の伝統も紹介することが出来た。
|
今後の研究の推進方策 |
平成31年度の研究に関しては、平成28年度・29年度・30年度に実施したシェイクスピア視覚的受容資料調査とそれらに関する分析研究の成果を踏まえてさらにケース・スタディを重ねながら視覚的受容に関する体系的な分析研究をさらに深める。特に上記の国際学会で発表したシェイクスピア絵画と挿絵入り全集に関する研究をシェイクスピア俳優やシェイクスピア崇拝の伝統とヴィクトリア朝視覚文化と関連付けながら論文化していく。最終的には多様なヴィクトリア朝シェイクスピア受容を歴史学・政治学的な知見を援用しながら検討し、当時の舞台演出や初期サイレント映画に見られるスペクタクル性をヴィクトリア朝の帝国主義的な眼差しと結び付けながら解明することを目指しているが、今年度は、当初の研究計画にあるように、サラ・シドンやエレン・テリー等の女優に注目しながら、女優がシェイクスピアの視覚的受容に果たした役割を絵画・文献資料分析により明らかにしていく。シェイクスピア女優に関してはさらに視覚的資料を収集する必要があるので、フォルジャー・シェイクスピア・ライブラー(米国ワシントン)での調査を計画中である。研究成果は論文化し関連学会にて研究発表を行い、関連学会誌等での論文の出版も目指す。研究成果の社会的還元としては、10月に女優に注目した公開講座を開催する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、国際学会参加旅費が予想以上にかかり、予定していた関連文献資料を購入することが出来なかった。次年度使用額は、今年度予算と合わせて、予算不足で購入できなかった関連文献資料の購入にあてることを計画している。
|