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2016 年度 実施状況報告書

手引書としてのマーティノー『経済学例解』研究--物語による専門的知識の普及

研究課題

研究課題/領域番号 16K02456
研究機関愛知県立大学

研究代表者

松本 三枝子  愛知県立大学, 外国語学部, 教授 (90165910)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードハリエット・マーティノー / ハンナ・モア / イギリス文学 / 手引書 / 経済学 / ユニテリアン主義 / 福音主義 / 女性作家
研究実績の概要

本研究の目的は、ハリエット・マーティノーの『経済学例解』を手引書の観点から検証し、十分な知識を持たない一般の人々に、有益な専門的知識を普及するための有効な方法とその特性を明らかにすることである。本年度は、知識を貧富・階級の格差を解消するために有効な手段としたマーティノーのユニテリアン主義の特性を分析した。
ハンナ・モアとの比較研究:国教会福音主義派のハンナ・モアとの比較研究を視野に入れながら、ユニテリアンであったマーティノーのユニテリアン主義の持つ平等性と教育重視の思想に焦点を絞り分析を進めた。産業革命後のイギリス社会の混乱は、貧富の格差に根差す階級対立が深刻化し、フランス革命前夜のような危機的状況にあるとマーティノーは認識していた。彼女は、そのような状況を打破するためには、国民全体が問題意識を共有することが必要と考えた。本研究で扱う彼女の『経済学例解』は、19世紀イギリスが抱えていた社会問題を解決するための方法を提示しているシリーズである。同時にそのために必要となる経済学の知識の手引書となっている。
福音派の国教会信徒であるハンナ・モアも同時代のイギリス社会を危機的な状況と認識し、マーティノーと同様に労働者などの下層階級の人々の教育を重視している。二人の大きな相違点は、モアが現世における不平等を受け入れることを求め、そのために信仰と教育を授けようとしたことに比較し、マーティノーはあくまで教育の平等により、知識を共有することによる社会変革を目指したことにある。
以上の研究成果を、日本英文学会第88回大会シンポジウム「近代イギリスのチャリティを読む」や研究論文「Harriet MartineauとHannah More―政治・社会状況への危機意識と物語の役割」などで公表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度の実施計画である、知識を貧富・階級の格差を解消するために有効な手段としたマーティノーのユニテリアン主義の特性について、予定通りハンナ・モアとの比較研究を実施し、日本英文学会におけるシンポジウム「近代イギリスにおけるチャリティを読む」や研究論文「Harriet MartineauとHannah More―政治・社会状況への危機意識と物語の役割」などに、その研究成果を公表できている。

今後の研究の推進方策

経済学理論のシミュレーションとして物語を用いたハリエット・マーティノーの『経済学例解』の手引書としての有効性と先駆性を明らかにする。
産業革命後のイギリス社会では貧富の格差や、労働者階級と中産階級の対立など、国家を二分するような社会問題が山積していた。マーティノーはこれらの社会問題を解決するためには、国民全体がこれらの問題を理解すること、つまり経済学(political economy)の知識が不可欠であると考えた。そのために、彼女が着手したのが、経済学を解説することであった。
本研究では「経済学理論の具現化と見ればすぐにわかる絵のようなもの」という目的になぜ物語という手法が有効であったのかを分析していく。マーティノーは、専門的知識のない人々に、経済学理論を解説し理解を進めるためには、理論の具体的なシミュレーションが必要であると考えたのではないか。その目的のためには、物語という手法が極めて有効となぜ考えたのか、歴史的経緯も含めて、『経済学例解』の手引書としての特性を分析する。

次年度使用額が生じた理由

ハリエット・マーティノーに関しては多くの研究資料・先行業績を収集できたが、ハンナ・モアやジェイン・マーセットに関しては第1次資料の収集及び彼女たちに関する研究業績の閲覧・収集にさらに時間が必要であったため。

次年度使用額の使用計画

マーティノーの手法である、複雑で難解な理論のシミュレーションに、物語を用いることの有効性と先駆性の検証を、ハンナ・モアやジェイン・マーセットによる著述の閲覧・収集、彼女たちに関する研究業績の閲覧・収集をさらに遂行することで、比較分析を進めていく。
マーティノーが『経済学例解』で目指したのは、彼女自身の言葉によれば「経済学の理論を具現化したもの、見ればすぐにわかる絵のようなもの」である。本研究では、「経済学理論の具現化と見ればすぐにわかる絵のようなもの」という目的に、なぜ物語という手法が有効であったのかを、ハンナ・モアやジェイン・マーセットと比較しながら分析を進めていく。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Harriet MartineauとHannah More―政治・社会状況への危機意識と物語の役割2017

    • 著者名/発表者名
      松本三枝子
    • 雑誌名

      愛知県立大学大学院国際文化研究科論集

      巻: 18 ページ: 47-68

    • オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] Harriet MartineauのIllustrations of Political EconomyとPoor Law-先達としてのHannah More, Jane Marcet2016

    • 著者名/発表者名
      松本三枝子
    • 学会等名
      日本英文学会第88回大会シンポジウム「近代イギリスのチャリティを読む」
    • 発表場所
      京都大学(京都市)
    • 年月日
      2016-05-28
  • [図書] 帝国と文化2016

    • 著者名/発表者名
      松本三枝子、江藤秀一、山本聖史、竹谷悦子、ティム・バリンジャー、江藤光紀、一谷智子、堀真理子、山口恵里子、清水知子、巽孝之、鈴木章能、仙葉豊、朴宣美、向井秀忠、中田元子、対馬美千子、井石哲也、安藤聡、長岡真吾
    • 総ページ数
      510(382-401)
    • 出版者
      春風社

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公開日: 2018-01-16  

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