研究課題
3年目にあたる今年度は、Austenの_Emma_(1815)と_Persuasion_(1817)_の読み直しを中心に進めた。今年度は比較対象のEdgeworthの生誕250周年に当たり、国際的にEdgeworth研究への注目も高まる機運の中、同時代のAustenらロマン派期の小説を俯瞰した国内外の国際学会で成果の一部を発表し、専門家らとの意見交換や最新の研究の動向の把握を積極的に行うことができた。特に、7月と12月にそれぞれ口頭発表した国際学会は、開催地がそれぞれオランダ共和国、アイルランド共和国ということで、英文学をヨーロッパ文学の広い文脈で捉える視座での基調講演やディスカッションが闊達で今後の研究に貴重な示唆を得た。_Emma_と_Persuasion_の読み直しは、各作品でヒロインが家庭空間の内外で注ぐ視線に潜むリアリズムとロマンスの作用を重点的に分析することを中心に進めた。また、歴史的文脈で「コロニアルな視線」への理解を深めるため、イギリス帝国のネットワークを行き来したAustenとEdgeworthの親族・知人(海軍将校であった親族を中心に)に関する一次資料・二次資料の検証に取り組んだ。夏季に資料調査を集中的に行った大英図書館では、キャプテン・クックを再評価する展示が開催されており、植民地の開拓や航海にまつわる視覚表象の調査も行うことができた。Austenの受容に関する研究も継続し、Austenの家庭小説の受容を夏目漱石の文学理論に検証する英語論文を1編まとめた。
2: おおむね順調に進展している
これまでの研究成果の一部を、国内外で開催された国際学会で口頭発表し(招待講演1回を含む)、論文1編にまとめたため。国際学会では、最新の研究動向を再確認しながら国内外の専門家と意見交換を行い建設的なフィードバックを得ることができた。
2019年度は、エッジワースの手稿コレクションの試験的なデジタルアーカイブ・プロジェクトが立ち上がったオックスフォード大学を拠点として、オースティン研究の主要拠点の一つであるチョートン・ハウス図書館や大英図書館などで資料調査を継続し、現地の研究者と意見交換を定期的に行いながら、成果をまとめる。
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