今年度は長期研修を取得したため、エッジワースの手稿コレクションのデジタル化プロジェクト(“Opening the Edgeworth Papers” 研究代表ローズ・バラスター教授、カトリオーナ・キャノン司書)が開始したオックスフォード大学を拠点に調査継続と成果発表を行なった。同プロジェクトは、オースティンの手稿のデジタル化を率いたキャスリン・サザーランド教授らとのネットワークが緊密で、招待された非公開ワークショップ等を通し、近代英国文学の最新の手稿研究方法とその成果の発信技術等を学び、本課題の視座をより多角的に展開することができた。同大学附属図書館は、Castle Rackrentの希少コピーを所蔵しており、調査と並行して、同館のデジタル版編集コースを受講し、現在も連携して抄録デジタル版を作成中である。
また、本課題で、読者を誘導する技巧として、語り手や登場人物の「コロニアルな」視線や「ロマンス化する」視線を中心に検証した過程で、当時の読者たちがどのような視線で作家像を再構築しているのか、という問題への接続も重要であることを着想した。そこで、主に19世紀読者のエッジワースタウンやチョートンへの文学観光の一部を分析し、その予備的論考を、英国18世紀学会年次大会と、欧州ロマン派学会連合の共同研究( "Romantic Europe: The Virtual Exhibition” プロジェクト 研究代表オープン大学ニコラ・ワトソン教授、オクスフォード大学カトリオーナ・セス教授)の非公開ワークショップ(招聘)で発表した。後者の研究集会では、ロマン派期物質文化を一般に紹介する「公衆関与」(public engagement)のキュレーションの実地研修を、大英図書館、オックスフォード大学関係者等と共に行った。その後のCovid-19の感染拡大で国際的に学校機関・文化機関が閉鎖した際、オンライン展示の社会的役割が再注目され、同共同研究も大きく展開している。担当部分の展示は近日公開予定である。
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