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2017 年度 実施状況報告書

トマス・マロリー『アーサーの死』の出版史から探る18、19世紀英国の中世主義

研究課題

研究課題/領域番号 16K02461
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

不破 有理  慶應義塾大学, 経済学部(日吉), 教授 (60156982)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2021-03-31
キーワードWilliam Caxton / Thomas Malory / アーサー王の死 / Arthurian Revival / Lady of Shalott / テクスト出版史 / 薤露行 / Alfred Tennyson
研究実績の概要

本研究はトマス・マロリー『アーサー王の死』のテクストの出版史と絡めながらアーサー王伝説の復活の道を辿る試みである。1485年から今日まで『アーサー王の死』出版史における空白の世紀が18世紀である。本年度の前半は出版史上空白の18世紀初頭から中葉までにおいて、「アーサー王」と作者マロリー、そして『アーサー王の死』の印刷業者キャクストン三者への評価がアーサー王伝説への評価の変化にも関わると考え、キャクストンの伝記、英国人物事典、印刷活字史から論考をまとめた。本論文は国際アーサー王学会英国支部大会での発表時に投稿依頼があり、国際アーサー王学会機関誌2017年号の“Approaches to Arthurian Studies:from Tradition to Innovation”という特集欄に掲載された。
2017年7月国際アーサー王学会(ドイツにて)で"Sir Mordred 'the Malebranche', Renart’s heir?:possible sources for the Alliterative _Morte Arthure_and its thematic significance"と題した発表を行った。またヘブライ大学ジョン・ホイットマン教授の知遇を得て19世紀のアーサー王伝説復活の牽引者ともなったアルフレッド・テニスンの “Lady of Shalott”について共同セミナーを開催することになった。2018年4月に筆者は夏目漱石の「薤露行」におけるアーサー王伝説と漢学の影響を論考にまとめ発表する予定である。
2017年12月には『アーサー王の死』のテクスト改変の歴史を「書物の境界」という観点から講義した。この際の講義録を発展させ、作者・編集者・出版者・読者がどのようにテクストを改変し原作者の意図とは異なるテクストを成立させるかを論じた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の設定した考察対象の最初の時代区分である1754年までの事象について、上述したように査読論文が国際アーサー王学会の機関誌に掲載されたことは本研究の意義を確認できた点で意味深い。本論文は海外のLambert Academic Publishingから出版の打診を受けており、今後の研究の展開次第では検討したい。
また国際アーサー王学会で口頭発表した論文は英仏文学者から評価され専門誌への投稿を勧められている。ヘブライ大学ジョン・ホイットマン教授とのアルフレッド・テニスンの “Lady of Shalott”共同セミナーMirroring the Mystery: The Lady of Shalott in Britain and Japanでは、ホイットマン教授は19世紀英国絵画John Waterhouseの三作品の分析から“Lady of Shalott”を論じ、筆者は夏目漱石の「薤露行」におけるアーサー王伝説と漢学の影響を考察する。日英文化における“Lady of Shalott”を比較文化的視点から検討する研究セミナーを2018年4月ヘブライ大学で開催する準備を整え、発表原稿はすでにまとめた。本研究のあらたな展開の準備となりうると考えている。

今後の研究の推進方策

国際アーサー王学会で口頭発表した論文"Sir Mordred 'the Malebranche', Renart’s heir?:possible sources for the Alliterative _Morte Arthure_and its thematic significance"の投稿を勧められているので今年度内にまとめたい。またヘブライ大学ジョン・ホイットマン教授とのアルフレッド・テニスンの “Lady of Shalott”共同セミナーでは、筆者は夏目漱石の「薤露行」におけるアーサー王伝説と漢学の影響を考察するが、その準備過程でマロリーの『アーサー王の死』がどのように明治期の文人たちに受容されていたのかという視点を得ることができたので、本研究の後半の時代区分に新たな視座を据えつつ、今後の研究を展開させたい。まずはセミナーに向けた原稿を土台に夏目漱石の「薤露行」におけるアーサー王伝説について論考をまとめる予定である。
また当初の計画で予定していた18世紀前半のアーサー王伝説・物語の言及内容とアーサー王への言及頻度を全般的に収集し解題を付した資料としての目録を作成したい。その際、Daniel P. Nastali and Phillip C. BoardmanのThe Arthurian Annals(2004)の書誌を活用しつつ、1700年から1754年までの作品のリストを作成補完する。

次年度使用額が生じた理由

理由:2018年4月のヘブライ大学における共同セミナー参加の渡航費を当初年度内に清算する予定であったが、2017年度に動作の安定したPCを購入する必要がありその購入のタイミングと必要な書籍の購入を優先させた結果、残高が十分ではなかったため、渡航費の申請を次年度に回すことになった。その結果、残高が生じることになった。

使用計画:イスラエル渡航費および論文原稿の英文校正の費用、およびマロリーの『アーサー王の死』の明治期の文人たちへの影響関連資料の購入およびテニスンの“Lady of Shalott”のテクスト調査のために大英図書館での調査も計画したい。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] 作者・編集者・出版者・読者のしなやかな境界―― サー・トマス・マロリーの『アーサー王の死』のテクスト改変の歴史2018

    • 著者名/発表者名
      不破有理
    • 雑誌名

      書物の境界

      巻: 1 ページ: 57-69

  • [雑誌論文] Paving the Way for the Arthurian Revival: William Caxton and Sir Thomas Malory’s King Arthur in the Eighteenth Century2017

    • 著者名/発表者名
      Yuri FUWA
    • 雑誌名

      Journal of the International Arthurian Society

      巻: 5 ページ: 59-72

    • DOI

      10.1515/jias-2017-0005

    • 査読あり
  • [学会発表] Sir Mordred “the Malebranche”, Renart’s heir?: possible sources for the Alliterative Morte Arthure and its thematic significance2017

    • 著者名/発表者名
      不破有理
    • 学会等名
      The 25th International Arthurian Congress
    • 国際学会

URL: 

公開日: 2018-12-17  

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