| 研究課題/領域番号 |
16K02472
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| 研究機関 | 同志社大学 |
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研究代表者 |
川島 健 同志社大学, 文学部, 教授 (60409729)
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| 研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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| キーワード | 戦後英国演劇 / Angry Young Men / 母性 / ジェンダー / 福祉政策 / 階級 / ニューレフト |
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| 研究実績の概要 |
本研究は第二次世界大戦直後から1970年頃までの英国演劇を「母性」とkitchenという観点から考察することを目的とする。これまで戦後英国演劇はJohn OsborneのLook Back in Angerが初演された1956年を分岐点とし、その後はAngry Young Menという視座で考えられてきた。しかしそれが焦点を当てている「若き男性の父親世代に対する怒り」は、制度批判に結びつけられなかった。男性中心主義的な「父子関係」の代わりに、本研究は保護し／保護される「母子関係」に着目し、それを醸成する場としてkitchenに注目する。そこで育まれる様々な「母性」が戦後英国の福祉国家政策を反映し、階級とジェンダーが入り混じる英国特有の家族問題を照らしだしていることを論証するとともに、1956年を分岐点とする時代区分を問題にする。
2016年度は資料収集、分析に集中した。主にJohn Osborneに注目し、彼の作品が当時の福祉政策の在り方にたいする批判となっていることの証明をはかった。福祉政策にかんする多くの貴重な資料を集め、それが「母性」の比喩で語られることを調査した。そして母性化する社会によりmasculinityが奪われていると感じる作家たち(Angry Young Men)の反応を検討した。その一部として、論文「福祉政策下における男の魂――『怒りを込めて振り返れ』とマザリング」を執筆し、日本英文学会『英文学研究』に2017年3月末に投稿した。その論文は目下査読中である。
またTerance RattiganやPriestleyらのpre-1956年世代の劇作家の作品を調査し、1940年代の女性表象についても分析した。そこで描かれる女性たちに「母性化」（男を保護する役割の重視）の傾向があることが判明した。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
海外での研究発表と資料調査を予定していたが、校務と重なり双方とも果たせなかった。また海外からの資料の取り寄せに想定外の時間がかかり、分析になかなか乗り出せなかった。これらの理由のために「やや遅れている」という進捗状況と判断した。
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| 今後の研究の推進方策 |
2016年度に予定をしていた海外での研究発表と資料調査を2017年度に行いたい。現在までのoutputはやや乏しいが、その代わり資料収集と分析に時間を割くことができた。2017年度はそのinputを成果として発表する年としたい。まずは、すでに書きあげた論文「福祉政策下における男の魂」の補遺となる「ニューレフトのホモフォビア」を書きあげたい。戦間期から戦後にかけて英国演劇で描かれた女性表象を系譜を辿り、「階級移動する女たち」としてまとめたい。これらの論文により、1940年代の英国演劇が女性の母性化と男性の脱masculinity化を描いていたことを証明したい。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
2016年度には海外での研究発表と資料調査を予定していたが、校務と重なり、果たすことができなくなった。次年度使用額は基本的のふたつの海外出張に行くことができなかったために生じた差額である。
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| 次年度使用額の使用計画 |
2017年度中に海外発表と資料調査をし、この点に関する遅れを取り戻すつもりである。
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