本研究は第二次世界大戦直後から1970年頃までの英国演劇を「母性」とkitchenという観点から考察することを目的とした。これまで戦後英国演劇はJohn OsborneのLook Back in Angerが初演された1956年を分岐点とし、Angry Young Menという視座で考えられてきた。それは男性性を前景化する作品であった。本研究は、男性中心主義的な視点の代わりに、保護し/保護される母子関 係に着目し、それを醸成する場としてkitchenに注目する。そこで育まれる様々な母性が戦後英国の福祉国家政策を反映し、階級とジェンダーが入り混じる英国特有の家族問題を反映していると論じた。
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