研究課題/領域番号 |
16K02476
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研究機関 | 大阪大谷大学 |
研究代表者 |
服部 慶子 大阪大谷大学, 人間社会学部, 教授 (00469511)
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研究分担者 |
服部 典之 大阪大学, 文学研究科, 教授 (50172937)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ヴィクトリア小説 / ブロンテ姉妹 / 火の表象 / センセイション・ノベル |
研究実績の概要 |
本研究『ヴィクトリア朝文学における「火をつける女」の表象』に関する論文として、「火の力と女性ーー火に喩えられる文学作品の女性たちーー」を執筆し、1.火とその表象について、2.「火の女性」としてのキャサリン、ジェイン、顕子、プルート夫人、3.「火をつける」女性と比喩表現、の3点に関して詳細な議論を行った。翻訳については、マリアン・トールマン編『歴史のなかあのブロンテ』を分担執筆した。また公開講座として「英文学における「火をつける女性」たち」というタイトルで講演を行ったことも特筆できる。本講演は一般市民向けのものであったため、英文学という分野に留まらず広く世間に本研究の重要性をアピールできた。 また、平成28年夏にオックスフォードのボドリアンライブラリーに出張をし、Daphne du Maurier, The Infernal World of Branwell Brontёを検討し、平成29年度に計画しているブロンテ協会でのシンポジウムの根底をなす資料調査を行った。また『ジェイン・エア』という傑作がしばしばジャンルとして分類されるセンセイション・ノベルの研究も行い、特に放火をテーマにしているMary Elizabeth Braddon, Lady Audley’s Secret (1862)の原著を子細に検討したことは大きな実績であった。この小説が代表する大衆文学に描かれる「火をつける女性の表象」は人心を掻き立てる扇情小説としてのものであり、女性の自立をテーマとする『ジェイン・エア』の深刻さとは質的にかなり異なることを確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
海外出張によって基礎的文献を詳しく検討できたことは初年度の実績としては本課題の根幹を形成する意味で大きな意味を持った。また、課題に関する論文1本、翻訳一冊を出版でき、講演を一回行えたことは初年度の業績として計画以上に研究が進捗していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度も引き続きオックスフォード大学のボドリアンライブラリーに海外出張し、火の表象に関係する小説や文献を調査する。特にヴィクトリア朝小説やブロンテ姉妹及び弟であるブランウェルについての資料を徹底的に調査、精読する計画である。ヴィクトリア朝に出版された小説で現在忘却されているものが多数ある。それらを通読し、「火をつける女性」表象との関係を調査する。 平成29年度で最大の業績となる予定であるのは、日本ブロンテ協会でブロンテ姉妹の弟であるブランウェルについてのシンポジウムの司会兼講師を務めることである。彼のジェンダーは男性であるが、本課題の「火をつける」者としての表象に実は大きくかかわっていることを伝えると共に、他の講師たちと活発な議論ができることを期待している。
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次年度使用額が生じた理由 |
校務に忙殺されたことと、海外出張を二回計画していたものが校務と重なり、使用額が減じる結果となった。来年度に十分な研究を行う中での執行を予定している。
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次年度使用額の使用計画 |
海外出張に加えて、国立国会図書館への出張調査、また学会出張を予定している。海外はオックスフォード大学ボドリアンライブラリー出張であり、学会出張は研究代表者が司会兼講師を務める日本ブロンテ協会が開催される中央大学などを予定している。
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