研究課題/領域番号 |
16K02477
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研究機関 | 神戸薬科大学 |
研究代表者 |
赤井 朋子 神戸薬科大学, 薬学部, 准教授 (70309433)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | イギリス演劇 / レヴュー / ノエル・カワード |
研究実績の概要 |
1910~30年代のロンドンにおいては、ミュージカルの先行芸能(ヴァラエティ、レヴュー、オペレッタなど)が数多く上演されていたが、それらのジャンルは当時、ロンドンに限らず、欧米の主要な都市や日本においても同様に流行していた。本研究課題はその種の演劇が、外国の演劇文化と交流し国際化して行く過程において、いかに国民的な性格を持つものへと変化していったのかを明らかにすることを目的としている。 3年目の2018年度は、ノエル・カワードの作品を中心に研究を進めた。イギリスの劇作家ノエル・カワードは、ストレート・プレイ以外にもレヴューやオペレッタなどの台本を書き、作詞や作曲もしていたが、そのカワードによるレヴューの中から、1920年代の『ダンスを続けて(On with the Dance)』(1925年)と1930年代の『作詞作曲(Words and Music)』(1932年)の2作品の上演に関する資料を精査することにより、両者の間の違いを明確にすることを試みた。その結果、1920年代には多様な文化が交錯する国際的な場であったカワードのレヴューも、1930年代になると外国の要素を排除した国内志向の強いものへと変化していったことがわかった。レヴューというジャンルは同時代の世相を微妙な方法で諷刺的に描く特徴を持っていたが、特に『作詞作曲』においては、1929年の世界恐慌や1931年のウェストミンスター憲章(大英帝国のブリティッシュ・コモンウェルスとしての再編)等との関連性を指摘できることもわかった。 本研究の場合、国際化の過程を経て愛国主義の方向に向かう動きを、ポピュラー音楽劇の発展過程の中から見出そうとしている点に意義があると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題が始まってから、親族の介護の問題が生じたため、また、他の研究プロジェクトが始まりそちらにもいくらか時間を費やすことになったため、全体的にやや遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の補助事業期間の延長が認められ、2019年度が最終年度となった。2019年度においては、これまでに行った調査研究の内容を論文等にまとめて発表する予定である。具体的には「研究実績の概要」欄に書いた内容をまとめたものと、坪内士行が英国に留学していた1910年代のロンドンにおける音楽劇の状況を特に国際性や多様性の観点からまとめたものを、論文の形で発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
上で述べた理由により研究に遅れが生じたため、それに応じて次年度使用額が生じた。補助事業期間の延長が認められ、2019年度が最終年度となったので、主として研究成果をまとめたり発表したりするのに必要な図書や備品、消耗品を購入することにあてる。また、一部、学会旅費にも使用する。
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