アメリカでは、1929年の大恐慌以降、共産主義運動が急速に高まった。それに伴い、左翼系の雑誌が創刊され、労働者の階級意識を高め、社会革命と芸術表現を結びつける文学運動が進んでいった。プロレタリア小説の勃興は、文学と政治との関係について二つの問題を提起した。一つは、文学の政治的有効性をめぐる問題である。この問題をめぐって雑誌Partisan Reviewはプロレタリア文学と決別し、モダニズム文学擁護へと向かった。プロレタリア小説が提起したもう一つの問題は、階級という概念と人種やジェンダーをめぐる問題である。本研究は、この3つの要素に着目して、プロレタリア小説の独自性と複雑さを分析したものである。
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