本研究は19世紀前半のまでの米国海洋文学とナショナリズムとの関係を論じるものである。19世紀米国は領土拡張期に当たり、開拓を中心に描く文学や、北東部、西部、南部といった地方色文学が、文学研究では主流であった。しかし、少なくとも鉄道が発達するまでの19世紀前半の米国は海洋国家でもあり、かつ1812年の対英戦争によるナショナリズムの高揚が海洋国家としてのアイデンティティ形成に影響を及ぼした。こうしたナショナリズムの時期の海洋文学が、どのようにアメリカの建国神話を形作ろうとしたのか、もしくはどのようにナショナリズムに応答しているのか、主にジェイムズ・フェニモア・クーパーの小説を材料に明らかにした。
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