研究課題
基盤研究(C)
本研究は、精神分析学とマルクス主義哲学の影響のもと、英文学研究において広く実践されてきた分析方法を批判的に再検討するものである。「懐疑的解釈」と呼ばれるこの方法は、文学テクストには表面的な意味の背後に隠れた意味が潜在し、解釈者=研究者の仕事とは、テクスト自身が抑圧する真の意味を回復し、テクストを書き換えることにあるという考え方にもとづいているが、本研究の成果は、このような批評に対する理論的アプローチと、英国の一般読者を対象とした実証的調査とを統合した点にある。
英文学
本研究の意義は、「素養ある読者」という理論的構築物を前提とした従来の「読者反応論」とは異なり、これまで学術調査の対象とされてこなかったNPOなどの協力を得ながら、読書会や文学フェスティバルへの参加、読み物雑誌や書評サイトなどの購読や閲覧とそれらへの投稿、さらに読み聞かせボランティアや創作コースへの参加までを広義の読書経験と捉えて、一般読者にとっての読むことの意味を多面的に捉えた点にある。