研究課題/領域番号 |
16K02487
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
山内 功一郎 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (20313918)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アメリカ / 現代詩 / エレジー / 文学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、以下の問題を解き明かすことである――「アメリカの詩人マイケル・パーマーの作品は、「アンチ・エレジー」的な性格をどのように具体化し、同時代の社会に対して担うべき役割を果たしているか」。 上記の研究を進めるための準備として、研究計画の初年度にあたる2016年度は、パーマーとアメリカ社会に関する先行研究を整理しながら研究に役立つものを抽出し、どのように活用するか検討した。そしてパリでリサーチを行い、長年にわたりパーマーと共同制作に取り組んできたユダヤ系アメリカ人の画家、アーヴィング・ペトリンへのインタビューを実現することができた。ペトリンはパーマーのアンチ・エレジー的な詩作のメカニズムに通じており、実作者ならではの深い知識と洞察を提供してくれたので、研究を進める上で極めて有益な情報を得ることができた。その結果、まだ研究の初年度ではあるが、成果の一部をパーマー論「この時代の闇の中で――マイケル・パーマーの近作について」に組み込み、文芸誌『三田文学』誌上に発表することができた。 上記の研究実績に加え、アメリカの詩人フィリップ・ラマンティアをめぐる査読論文「“冒険におけるシュルレアリスト”の誕生――フィリップ・ラマンティアの少年時代と初期詩篇について」を研究誌『シルフェ』誌上に発表することもできた。ラマンティアはパーマーにとっては先行世代にあたるカリフォルニアの詩人なので、本研究を進める上で有意義な情報を効果的にまとめあげる成果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
既に「研究実績の概要」中で述べたように、研究計画初年度の2016年度において、文芸誌『三田文学』誌上で研究成果の一部をパーマー論「この時代の闇の中で」として発表することができた。この点から言えば、当初の計画以上に研究が進展していると評価することができるだろう。主にパーマーの近作をとりあげたこのパーマー論は、パーマーの作品における「サイレンス」が旧来的なエレジーの限界を打破し、さらにエレジーの概念自体をも拡充し更新するアンチ・エレジー的な機能を有していることを証明している。この成果は、本研究の推進に大きく役立つことが予測される。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度はカリフォルニアにわたり資料収集を行い、さらにパーマー本人とのインタビューを実現させる予定である。インタビューではもちろんパーマーの手がけたアンチ・エレジー的な作品をめぐる情報を収集することになるが、それと同時に、現在のアメリカにおいて現代詩自体が担いうる役割についての見解も確認する予定である。そうすることによって、本研究の視野を広め、アンチ・エレジーと現代社会の密接な関係性に迫るための準備を行いたい。 なお、上記の作業に加え、パーマー論を中心に先行世代や同時代の詩人・作家・画家などを有機的に論じた考察をまとめあげ、それらを本研究の直接的な成果に結びつけるための準備も進める予定である。
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備考 |
サンフランシスコ州立大学のAndrew Joron 准教授の協力を得て、Philip Lamantia に関する研究計画を進めた。
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