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2017 年度 実施状況報告書

アメリカ南部と白人性―第二次大戦後の時代性と人種表象の力学

研究課題

研究課題/領域番号 16K02494
研究機関熊本大学

研究代表者

永尾 悟  熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 准教授 (80389519)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードアメリカ南部 / 白人性 / 自伝 / リチャード・ライト
研究実績の概要

本研究の全体像として、地理的・思想的領域としてのアメリカ南部をめぐり、この地域的独自性と表裏一体とされた白人性の概念から、Richard Wright、James Baldwin、その他の同時代の黒人作家の文学を考察する。公民権法制定や冷戦構造によって南部の位置付けが変化した第二次大戦後において、これらの作家たちが、地域内の人種的相互作用を越えて構築される南部白人性を表象しようとした文学的想像力を捉えることを目指す。そのために、カラーラインと地理的境界線の相関性を再考する南部研究の新たな流れを踏まえ、白人性研究の理論的枠組みを援用しながら南部のローカリズムとグローバリズムの接点を人種という観点から探っていく。
上記の全体像を踏まえ、29年度はRichard WrightのBlack Boy (1945)およびAmerican Hunger (1962)において作者Wrightが南部経験と人種的自己を表象する上での諸問題や作品出版にまつわる経緯を考察した。本来二部構成として執筆されていたこの2冊の自伝が、白人読者を想定した出版社側の意向を受けて第一部のみBlack Boyとして先に出版された経緯を辿りながら、語り手を通して自らの経験を語る文学的言語を模索しながら作家としてあるべき自己像を提示しようとしたWrightの試みを論じ、黒人作家にとっての自己言及をめぐる葛藤を考察した。
この研究の成果は、20世紀前半から中盤までのアメリカン・モダニズムにおける大衆性について論じた共著『アメリカン・モダニズムと大衆文学』(30年秋出版)に掲載予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

上述の共著は29年度中に出版予定であったが、編集作業に時間を要したため30年度に出版されることになったため。また、29年度中に購入予定であった複数の図書について、年度内の納品が間に合わず、30年度に予算執行することになったため。

今後の研究の推進方策

1940年代後半から50年代にかけて出版されたwhite-life novel(黒人作家による白人主人公の小説)の中で、特に白人南部を描いたものに焦点を当て、アメリカ南部という地域性を媒介として人種的自己としての白人性がいかに表象されているのかを考察する。また、黒人文学が出版業界において一定の認知を得つつあった当時において、黒人作家は黒人経験を描くという「黒人らしさ」が求められていた中で、彼らにとっての人種的他者である白人の世界を中心に描いた意義についても考察する。本年度の考察の対象となる作品は、旧南部のアイルランド系ギャンブラーを描いたFrank Yerbyの歴史ロマンスThe Foxes of Harrow(1946)、および、新南部の白人クラッカー女性の生き様を描いたZora Neale HurstonのSeraph on the Suwanee(1948)の予定である。

次年度使用額が生じた理由

(理由)
購入を予定していたいくつかの海外取り寄せの洋書について年度内の納品に間に合わなかった。
(使用計画)
29年度中に納品できなかった図書を30年夏ごろまでには納品予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2018

すべて 図書 (1件)

  • [図書] アメリカン・モダニズムと大衆文学―時代の欲望/表象をとらえた作家たち2018

    • 著者名/発表者名
      藤野功一編著
    • 総ページ数
      320ページ(予定)
    • 出版者
      ミネルヴァ書房

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公開日: 2018-12-17  

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