研究課題/領域番号 |
16K02496
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
小林 正臣 琉球大学, 教育学部, 准教授 (30404552)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | バートルビー / オフィス・フィクション / ポストオフィス / ベンジャミン・フランクリン / トマス・ピンチョン / チャールズ・ブコウスキー / エドガー・アラン・ポー |
研究実績の概要 |
本年度は、当初の計画どおりに、資料収集による基礎調査が主たる活動であった。具体的には、「オフィス・フィクション」の一端を担い、かつ本研究において最重要と位置づけるポストオフィス・ワーカーとしての〈バートルビーたち〉に関する資料収集を行った。
書写人バートルビーの前職はポストオフィス・ワーカー、つまり郵政省管轄の職員である。しかし、これまでの研究では国家公務員であったことの重要性は軽視されてきた。彼の高度なリテラシーはポストオフィスで涵養され、“I would prefer not to”などに代表される否定的言動はポストオフィスからの解雇によると推測できる。すると本人を取り巻く文脈として、初代郵政長官を務めたベンジャミン・フランクリン、ポストオフィスに対して反体制的な『競売ナンバー49の叫び』を書いたトマス・ピンチョン、郵便局員としての長年の経験に基づいて『ポスト・オフィス』を書いたチャールズ・ブコウスキーらによる〈バートルビーたち〉が浮上する。それら作家および作品に関する資料と合わせて、ポストオフィスの歴史等についての文献(たとえばDavid M. HenkinによるThe Postal Age: The Emergence of Modern Communications in Nineteenth-Century Americaや、当該年度に出版されたWinifred GallagherによるHow the Post Office Created America: A History)も参照することで、〈バートルビーたち〉の存在を作品の内外から検証する準備を進めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で述べたとおり、作家および作品に関する資料収集は概ね順調に進んでいる。絶版により入手できない文献(たとえばTheodore PrattによるThe Barefoot Mailman)については、インターライブラリー・ローンを活用して対応した。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要で示した着想および資料に基づき、現在は審査付きの論文として学会に投稿する用意を進めている。そうすることで、研究の具体的成果を適宜示していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は既存の研究に関する資料収集が主であった。次年度は、それら資料のデータベース化等を行うための機器が必要となる。
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次年度使用額の使用計画 |
上記で述べたデータベース化を行う機器に加えて、次年度以降に出版予定の文献等も必要に合わせて購入していく予定である。
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