研究課題/領域番号 |
16K02499
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研究機関 | 神戸市外国語大学 |
研究代表者 |
松永 京子 神戸市外国語大学, 外国語学部, 准教授 (50612529)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 核文学 / 原爆文学 |
研究実績の概要 |
平成29年度は以下の4点を実施した。 (1) ブリティッシュ・コロンビア大学でカナダ先住民文学とウラン鉱山の関係についての調査を行った。具体的には、デネ族の土地に開かれたウラン鉱山の問題がRichard Van CampやMarie Clements等のカナダ先住民作家の作品のなかでどのように描かかれているのかを分析した。また、バンクーバーに居住するモスキアム族の会合 (Musqueam101) に参加し、北米先住民と環境の関係についての知識を深めた。本研究成果は、バンクーバー美術館が主催したAtomic Study、モスキアム族の保留地で開催されたMusqueam101, St. John's Collegeで開催されたResident Fellows Speaker Series で、講演という形で発表を行った。 (2) ミネソタ州フォンデュラック居留地出身のアニシナベ族の作家Jim Northrup の作品理解を深めるために、Fond du Lac Reservation Center & Museum で調査を行った。また、Northrup作品に描かれている北米先住民と原発の関係を調べるため、プレーリー・アイランド保留地でフィールドワークを行った。本研究成果はWestern Literature Association 学会で発表した。 (3) 日系カナダ人被爆者の多様なバックグランドや状況を理解するため、バンクーバーに在住する日系被爆者と会合し、インタヴューを行った。また、ブリティッシュ・コロンビア大学で、原爆や核問題を扱ったカナダ文学の文献調査を行った。 (4) 原爆と植民地主義の問題についての知識を深めるために、韓国で開催された国際ワークショップ「東アジアから原爆文学を読みなおす」に参加し、ハプチョンにある韓国人原爆被害者資料館で調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度は在外研究でブリティッシュ・コロンビア大学に在籍してため、カナダ先住民文学とウラン鉱山の関係についての調査や、原爆や核問題を扱ったカナダ文学の研究を大いに進めることができた。また、日系カナダ人被爆者と会合したり、韓国でフィールドワークを行ったりすることで、原爆と移民の関係、原爆と植民地主義の関係についての知識を深めることができた。加えてミネソタ州でJim Northrup作品に描かれる原発と保留地に関する調査にも着手することができたことは大きな進展であった。 平成29年度は、平成30年度に計画していた調査・研究をほぼ完了することができた。また、平成31年度に計画していた日系アメリカ文学と日系カナダ文学の発掘作業にも着手することができた。だが、もともと平成29年度に予定していたアメリカ南西部での現地調査は果たせていない。そのため、平成30年度はアメリカ南西部での現地調査を中心とした研究を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、チカーノ作家と北米先住民の核言説に関連する歴史的・地理的背景を理解するため、アメリカ南西部、特にアルバカーキとロスアラモスで現地調査を行う。ロスアラモスでは核や原爆に関するミュージアムを訪れ、アメリカ南西部における主流の「核の言説」を調査する。ニューメキシコ大学とアリゾナ州立大学では、アナヤ、バルケズ、サイエンズ等のチカーノ作家やアメリカ南西部先住民文学に関連した文献を調査する。 平成29年度に着手した、原爆・核に言及している日系アメリカ文学や日系カナダ文学の発掘作業も引き続き行う。
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