研究課題/領域番号 |
16K02503
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研究機関 | 和洋女子大学 |
研究代表者 |
古屋 耕平 和洋女子大学, 人文社会科学系, 准教授 (70614882)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アメリカ文学 |
研究実績の概要 |
平成28年度の研究実績としては、平成28年3月に大韓民国のHankuk University of Foreign Studiesにて行った招待講演の原稿を元にした論文“Translation and Classic American Literature: A Prospect for the Future of American Literary Scholarship”を同大学出版の学術誌Journal of British & American Studies誌上に発表した。同年6月には、本研究と関連するアメリカン・ルネッサンス研究の論文「『頭を突き出した蛇のような疑念』―「セプティミアス・フェルトン」における歴史と情動」が収録された論文集『ホーソーンの文学的遺産―ロマンスと歴史の変貌』が出版された。同年9月には、「知のコミュニティ」2016年夏季セミナーシンポジアム「18・19世紀アメリカと知のコミュニティの形成」において、「想像の世界文学共同体―マーガレット・フラーの『ゲーテとの会話』翻訳」というタイトルの発表を行った。同発表では、フラーの手によるヨハン・ペーター・エッカーマン『ゲーテとの対話』の英訳について論じたが、同発表のテーマを継続して、フラーのドイツ語テクスト英訳についての研究をある程度まで進めた。全体としては、概ね活発に業績の発表を行うことができたと評価できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では、平成28年度には、フレデリック・ダグラスやウィリアム・エイプスなどの、非標準英語、あるいは現地語と標準英語のバイリンガルと言えるマイノリティ作家や思想家の翻訳思想、及びその作品との関係を研究する予定であった。しかし、主に資料入手の都合から、平成29年度に予定していたマーガレット・フラーを中心する同時代の女性知識人の翻訳思想についての研究を先に行うことになった。研究実績の概要で述べた通り、マーガレット・フラーの翻訳実践及び理論の研究に着手し発表を行ったが、同発表原稿を元に、現在、研究をかなりの程度進めており、次年度中にはフラーと翻訳との関わりについての研究を論文としてまとめたい。これまでの研究では、アメリカ人作家の英語のテクストの中で翻訳について英語で論じている箇所を精査することに比重を置いていたが、今回初めて実際に翻訳を多く残したフラーの翻訳テクストと原文のドイツ語テクストを直接比較する比較文学的方法論を用いることになったため、ドイツ語テクストの読解に多大な時間を割くことになった。しかし、今後の本研究の発展を考えるならば、英語以外のテクストの研究は不可欠であり、全体としては、研究はほぼ順調に進んでいると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
進捗状況で述べた通り、次年度はマーガレット・フラーのドイツ語テクスト翻訳についての研究を一区切りさせたい。28年度は、特にフラーによるヨハン・ペーター・エッカーマン『ゲーテとの対話』の英訳について研究を行ったが、他にもフラーの手によるドイツ語からの英訳テクストは存在するため、それらのテクストについても精査する。その過程で、ドイツ語の知識も必要となるため、国内及び国外の学会等に多く参加し、比較文学及びドイツ語文学研究者からのコメントを得る予定である。また、フラー関連の資料に限らず、本研究に必要な一次及び二次文献収集のため、可能であれば、一定期間、合衆国及びヨーロッパ諸国に滞在し、大学図書館や公共図書館を訪れたいと考えているが、これについては、研究以外の任務との兼ね合いを見てスケジュールを調整することになる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定の金額を使用額が下回った主な理由としては、当初予定していた資料調査のための合衆国滞在と、やはり当初希望していた国内学会による発表を行うことができなかったためである。いずれの場合も、所属研究期間における研究以外の任務と、所属研究機関の変更によりスケジュールの調整ができなかったことが大きな理由だが、これについては想定内の変更であると考えている。資料やその他の消耗備品等の購入については、ほぼ予定通り行った。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度には、28年度に行うことのできなかった資料収集のための調査旅行を実施したいと考えているが、時期については、やはり研究以外の任務との兼ね合いによると思われる。最も重要なことは、五年間で無駄なく研究費を使って確実に研究計画を遂行することであり、できる限りまとまった時間が取れるときに調査旅行を実施したいと考えているため、時期の前後については今後も想定した上で使用計画を柔軟に変更する予定である。
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