研究課題/領域番号 |
16K02503
|
研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
古屋 耕平 神奈川大学, 外国語学部, 准教授 (70614882)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | アメリカ文学 |
研究実績の概要 |
平成29年度の研究実績は以下の通りである。2017年6月、イギリスのロンドン大学キングズ・カレッジにて開催された2017年国際メルヴィル学会において、ハーマン・メルヴィルの『白鯨』を中心とする諸テクストにおけるドイツ翻訳理論との関連性、特にドイツの作家ヨハン・ヴォルフガング・ゲーテの翻訳理論に対する応答についての口頭発表を行った。2017年7月、神奈川大学人文学会講演会において、アメリカン・ルネッサンスにおける翻訳の意義に関する講演を行った。2017年11月、マーガレット・フラーの伝記などで知られるピュリッツァー賞作家・研究者メーガン・マーシャル氏を招いて行われた広島大学の国際ワークショップでは司会を努めると同時に、マーガレット・フラーのヨハン・ペーター・エッカーマン『ゲーテとの対話』の翻訳に関する発表を行った。また、2017年7月、2018年3月にも、フラーのキャリアにおける翻訳活動の意義についてさらなる発表を行った。2017年12月、2018年2月には、本研究課題とも直接関連するアメリカ文学及びアメリカン・ルネッサンスにおける幸福の追求についての講演を、それぞれ明治学院大学と中央大学で行った。2018年3月、日本ホーソーン協会学会誌『フォーラム』にアメリカ文学研究関連書籍の書評を執筆した。平成29年度内の論文出版は無かったが、全体としては、概ね活発に研究成果の発表を行うことができたと評価できる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、平成29年度に予定していたマーガレット・フラーを中心する同時代の女性知識人の翻訳思想についての研究を行った。研究実績の概要で述べた通り、マーガレット・フラーの翻訳実践及び理論の研究について積極的に発表を行ったが、同発表原稿を元にした日本語論文はほぼ完成しており、平成30年度中には出版の運びとなる予定である。また、同論文をさらに発展させた英語版の論文にも着手しているが、その執筆については、前述の国際ワークショップにおいてメーガン・マーシャル氏からも有益な示唆を受けた。同時に、ハーマン・メルヴィル作品における翻訳の概念についての英語論文についても執筆を行った。この論文は過去に日本語で発表した論文における議論を元にしているが、ロンドンの国際メルヴィル学会における発表の際、参加者との質疑応答や、その後の討論から得られたいくつかの重要な示唆を踏まえ、大幅に加筆・修正を行ったものとなった。こちらは平成30年度中の出版を期待している。また、これらの研究に必要な資料収集のために、2018年2月には、アメリカ合衆国のテキサスA&M大学図書館を訪れ、国内では入手困難な一次資料及び二次資料を入手することができたのは、リサーチ面では大きな成果であった。平成29年度には、書評の出版を除いて成果の出版は無かったが、途中経過の発表と、そこから得られたフィードバックを元にした論文の執筆というサイクルが上手く機能し、全体としては、研究はほぼ順調に進んでいると評価できる。
|
今後の研究の推進方策 |
進捗状況でも述べた通り、平成30年度はマーガレット・フラーのドイツ語テクスト翻訳についての英語論文を完成させる予定である。まずは2018年7月にドイツのハイデルベルク大学で開催される国際エマソン、フラー学会における発表を通じて、アメリカ及びドイツの研究者たちからのフィードバックを得て、日本語論文では論じきれなかったフラーによる様々な翻訳テクストについての研究を進めたい。また、やはり前述の通り、メルヴィル作品における翻訳の概念についての研究については、英語論文の修正を行いながら少しずつ進めるつもりである。また、2018年6月、京都で開催される国際ポー・ホーソーン学会においては、ナサニエル・ホーソーンの視覚芸術とヨーロッパ体験についての発表を行なう予定だが、この発表もホーソーンのイタリアを始めとする海外経験の記録を辿るもので、本研究課題にも大きく関わっているため、本発表のための調査と平行して、ホーソーン作品における翻訳の意義についての研究を進めたい。また、平成30年度にも、本研究に必要な一次及び二次文献収集のため、合衆国内の大学図書館や公共図書館を訪れたいと考えている。平成29年度は約一週間の滞在であったが、リサーチで取りこぼした部分もかなり残ってしまった。研究以外の任務との兼ね合いにより今年度は難しいかも知れないが、可能であれば海外の調査旅行を行いたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初予定の使用額を若干下回った主な理由としては、予定していた資料調査のための合衆国滞在が希望していたよりもやや短くなってしまったということがある。研究外の任務によりまとまった時間を取れなかったことがその主な原因だが、これは想定内の修正である。平成30年度には、資料収集のための調査旅行を改めて実施したいと考えているが、時期については、やはり研究以外の任務を見ながら調整したい。場合によっては、調査旅行自体は再来年度に持ち越しとなるかもしれないが、単年度ではなく複数年度の研究計画であるので、トータルとして最も効率的に研究が遂行できるよう柔軟にスケジュールを組みたいと考えている。資料やその他の消耗備品等の購入については、ほぼ予定通り行った。今年度も、当初予定の必要な図書や資料、消耗品等を随時購入したい。
|