研究課題/領域番号 |
16K02503
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
古屋 耕平 神奈川大学, 外国語学部, 准教授 (70614882)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アメリカ文学 |
研究実績の概要 |
2021年度の研究実績は以下の通りである。 学会発表等については、2021年11月に日本英文学会関東支部大会におけるシンポジウム「十九世紀アメリカ文学における移動・移民」において司会・発表を務めた。本シンポジウムでは、十九世紀半ばのアメリカにおける移動・移民をテーマとし、各発表における作品分析をケーススタディーとして、人やモノの移動がもたらす人々の意識の変化について、グローバル化と反グローバル主義、観光と開発、難民・移民・人身売買といった、現在まで続く様々な問題を考える上でのヒントを、パネル・ディスカッションを通じて探ったが、本研究者の発表では、ハーマン・メルヴィル『ピエール』を取り上げ、1840年代から50年代にかけてマンハッタンのローワーイーストサイド周辺に大量に流入した移民の影に注目し、また1848年にヨーロッパで猛威を振るい、1849年にはニューヨーク市に到達し、その後五年間に渡って蔓延したコレラのパンデミックや、同時期に起こった外国人排斥運動と、作品の関係について論じた。 次に、2021年12月に日本ナサニエル・ホーソーン協会関西支部大会における、十九世紀アメリカ文学と住まいに関するシンポジウムにおいて発表を行った。本発表では、当時広く読まれた建築書であるA.J. DowningのThe Architecture of Country Housesを参照しながら、田舎暮らしを題材とするハーマン・メルヴィルの短編作品群における貧困と格差の問題について論じた。 論文等の発表に関しては、昨年度に引き続き、論文の執筆と文献の調査を行ったが、当該年度中には、2022年3月、日本アメリカ文学学会誌『アメリカ文学研究』58号に、「高尾直知著『〈嘆き〉はホーソーンによく似合う』書評を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度もコロナ感染症のため所属先機関によって研究調査のための渡航が大幅に制限され、希望していたアメリカ合衆国の大学図書館におけるデータベース利用を行うことができなかったことが一番の理由として挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、国内学会の一つにおいて発表を行ったハーマン・メルヴィルの『ピエール』におけるコレラ流行と外国人・移民差別の問題についての論考を執筆する。同時に、昨年度に引き続いて、マーガレット・フラーを中心とする同時代の女性知識人の翻訳思想についての英語版の完成を目指す。また過去2年間、全く行うことのできなかったアメリカの大学図書館における資料収集については、もし可能な状況であれば行いたいが、日本政府による帰国時の規制や所属先機関の方針を見るところ、今年度も現実的にはある程度の制約が予測されるため、入手可能な電子資料を中心に調査を行いつつ論文の執筆を進めることが、当面の現実的な目標となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
まず2021年度に、国内の学会はすべてオンラインで行われ、また出張旅行自体も所属先機関では基本的に許可されていなかったため、旅費が全く使用されなかった。また、希望していた合衆国の大学及び公立図書館での資料収集の研究調査にも、各種の制限により行くことができず、旅費が全く使用されなかった。図書を中心とする必要な物品、その他の支出については、概ね予定通りの購入を行った。 2022年度は、隔離期間無しでアメリカ合衆国への渡航と帰国が可能な状況になっていれば、過去2年間で行うことのできなかった研究調査を行いたい。しかし、年度内に渡航が難しい状況であれば、電子購入できる資料を入手し、引き続き調査をすすめる。また手持ちのPCおよび周辺機器がかなり古くなってきたため、必要に応じてアップデートする。
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