研究課題/領域番号 |
16K02504
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
荒木 純子 学習院大学, 文学部, 准教授 (20396831)
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研究分担者 |
田邉 千景 学習院大学, 文学部, 教授 (10316812)
中野 春夫 学習院大学, 文学部, 教授 (30198163)
吉野 由利 学習院大学, 文学部, 准教授 (70377050)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 英米文化 / アメリカナイゼーション / アングロファイル / 信仰復興 / アメリカ感傷小説 / シェイクスピア劇上演 / ジェイン・オースティン / 文化コンテンツの再製 |
研究実績の概要 |
1年目の平成28年度は各部門において先行研究の確認を進めつつ、一次資料の系統的な収集と分析を行い、合同研究会で討議、次年度の各自の課題追究のための基礎データとした。 第1部門(ピューリタニズムと信仰復興)は予定通り第一次信仰復興運動の調査を取りかかりに、信仰復興現象の後の時代の表象にかんする考察を進めた。成果の一部は17世紀セイラム魔女裁判の20世紀表象『るつぼ』、1920年代原理主義的信仰復興を批判した小説『エルマー・ガントリー』の論考を通じて発表されている。 第2部門(ジェンダー表象とセンチメンタリズム)も予定通り18世紀末に出版されたアメリカ感傷小説群をRichardson作品と比較分析しながら読み直しを行った。とくにイギリスの感傷小説のテーマや形式を引き継ぎながら、アメリカ感傷小説は女性主人公の「性」の問題について考察を進めた。成果の一部はHannah Webster FosterのThe Coquette(1798)の翻訳・解説の出版を通じて発表されている。 第3部門(シェイクスピアの上演)は予定通りC.H. Shattuck, Shakespeare on the American Stage(1976)等における19世紀アメリカのシェイクスピア劇上演にかんする基礎的な情報を確認すると同時に、上演テキスト、手稿版台本、劇評等の一次資料の収集と調査を行った。その研究成果の一部は昨年度の論文「オフィーリアの小唄―エリザベス朝イングランド社会の女性版怨み歌」を通じて発表されている。 第4部門(オースティンの受容)も予定通りClaudia L. Johnson等のオースティンの受容研究の動向を確認した。またWalter Scottの書評の再読を手始めに「イギリス小説」「イギリス文化」の定義を検証した。成果の一部は雑誌論文1編、共著1編、口頭発表2件で発表されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は4つの部門においてイギリス文学・文化コンテンツがアメリカにおいてどれだけ忠実に再製されたのか、英米文学・文化研究者共同の検証と再検討を通じてアングロファイルの文化的強度をおおむね計画通りに計測できた。次年度は各部門における「アメリカニズム/アメリカネス」言説を可能な限り拾い上げ、対応する「ブリティッシュネス」言説と比較しその共通する諸特性を特定化する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
現時点で順調に研究計画を実行できているので、申請通りに2年目も調査・分析を進めていく。 2年目の平成29年度は各部門における「アメリカニズム/アメリカネス」言説と、対応する「ブリティッシュネス」言説とを比較し分析する。初年度と同じく、各部門で得られた成果を合同検討会においてメンバーで共有し、最終年度の作業の基礎データとするとともに、年度報告論文集等の形式で外部に発信する。 第1部門は第二次信仰復興運動における「イングランド的」方法の検討、第2部門はCooperのPrecaution(1820)とSedgwickのA New-England Tale(1822)における「アメリカらしさ」の検討、また第3部門は「アメリカ」的なシェイクスピア台本・翻案作品の検討、第4部門はオースティンの北米版の検討を行い、それぞれの「アメリカニズム/アメリカネス」言説と「ブリティッシュネス」言説との比較分析を通じ、文化コンテンツの再製の諸特性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2年目に現地調査を十分に行う必要性が出たため、その旅費に充当できるよう、1年目の主に書籍購入への使用を控えた。そのため、物品費の使用額が予定より大幅に少なくなり、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
2年目は次年度使用額および1年目の執行状況を考え合わせ、本研究の遂行に向けて有効に使用する。 本研究の最終目的は、文化コンテンツの再製の検討、現在グローバルに流通する「アメリカニズム/アメリカネス」の固有性の検討にある。現地調査および現地の研究者との意見交換がより有効な使用法のように考えられるため、次年度使用額を含めて旅費を中心に充てる予定である。
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