研究課題/領域番号 |
16K02507
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研究機関 | 津田塾大学 |
研究代表者 |
野口 啓子 津田塾大学, 学芸学部, 教授 (60180717)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 反奴隷制小説 / ハリエット・ビーチャー・ストー / 家庭女性の政治力 |
研究実績の概要 |
本研究は、19世紀中葉のアメリカン・ルネサンス期に次々と発表された奴隷制をめぐる言説を一つの文学ジャンルとして捉え、それらが「もう一つのアメリカン・ルネサンス」を形成したことを明らかにすることを目的としている。この目的を達成するために、反奴隷制文学の間テクスト性を視野に入れつつ、スレイブ・ナラティヴや小説、政治的プロテスト、演説等を包括的に取り上げ、その諸相と系譜を検証するものである。 上記の研究のために、初年度の平成28年は、ウォーカーやチャイルドなどのプロテスト文学からストーの『アンクル・トムの小屋』へいたる反奴隷制の言説の精査を中心に考察を行った。特に、ウォーカーの『アピール』におけるジェファソン批判の論点を考察することができた。 2年目の平成29年度は、ハリエット・ビーチャー・ストー『アンクル・トムの小屋』を中心に、それ以前の反奴隷制の言説が本作品に与えた影響ならびに、本作品が以後の反奴隷制文学に与えた影響を検証した。前者についてはある一定の道筋がつけられたが、後者については膨大な資料を十分整理することができず、今後の課題として残った。しかし、その過程で、反奴隷制の言説のみではなく『アンクル・トム』における女性の力への考察ができたことは大きな成果であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、ストーと同時代の女性作家や、黒人作家との影響関係に対する検証を進めることになっていたが、対象とする作家や作品を絞りきれず、この点で研究がやや遅れ気味である。その一方で、次年度に予定している南北戦争後のストーの影響については、TwainのHuck Finnとの関連性について進めることができたため、今年度遅れている分については、次年度へ持ち込み、次年度の研究と一緒に検証する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
上記に述べたようにストーと同時代の女性作家や、黒人作家との影響関係についての検証がやや遅れ気味である。その一方で、次年度に予定している南北戦争後のストーの影響については、Twainの "Huck Finn" との関連性について進めることができたため、今年度遅れている分については、次年度へ持ち込み、次年度の研究と一緒に検証する予定である。また、昨年度は勤務先の校務等のため、まとまった時間を取ることができなかったが、今年度は、なるべく早く研究出張の計画を立て、米国での資料収集を行い、本研究に足りない奴隷制をめぐる地理的・歴史的理解を深める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度使用予定であった、国外旅費については、勤務校の校務が増加したため、海外での資料収集ができなくなった。そのため、その資料の整理に予定していた謝礼も派生しなくなった。その残余分を英語論文の校閲費にあて、次年度以降の論文発表に備えた。
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