研究課題/領域番号 |
16K02508
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研究機関 | 東京女子大学 |
研究代表者 |
本合 陽 東京女子大学, 現代教養学部, 教授 (90190264)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | intertextuality / Gore Vidal / Truman Capote |
研究実績の概要 |
20世紀アメリカにおけるホモエロティックな欲望を描くテクストに見られるインターテクスチュアルな関係を論じるため、2016年度は Gore Vidal を中心に資料収集および資料の整理を行った。まずはヴィダルに関する書籍を購入した。また、アメリカの図書館で資料の写真を撮り、収集した情報を整理するために iPad Pro および MacBook を購入した。 夏期休暇を利用し、 Harvard University を訪れ、 Houghton Library が所有する “Gore Vidal Papers” の調査を行った。1948年に出版され、1965年に大幅に改訂された The City and the Pillar と、1968年出版の Myra Breckinridge を中心に、作品成立および改訂の事情を探るべく、ヴィダルの手稿を閲覧し、必要な資料を収集した。また、ヴィダルが受け取った他の作家や編集者からの手紙やファンレターなどの情報も併せ収集した。収集の際の写真撮影に iPad を用い、撮りためた写真を Macbook と iPad Pro を駆使し、草稿ごとに整理をした。特に1965年の The City and the Pillar の改訂に関わる資料は豊富で、大きな収穫である。 さらに、 Vidal といわばライバル関係にあり、ともに Tennessee Williams と親交の深かった Truman Capote に関しても資料収集を行った。死後出版の Summer Corssing の手書き原稿、小説第1作の Other Voices, Other Rooms の手書き原稿とタイプ原稿、および手紙類を、 New York Public Library が所蔵するマイクロフィルムにより閲覧し、必要なものを写真に撮り収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
収集を予定していた資料はほぼ、集めることができた。ただ、資料の整理と分析は予定通りに進んでいるとは言えない。 まず2016年度に購入を予定していた Vidal 関連の書籍はほぼ入手できた。また、 Houghton Library が所蔵する “Gore Vidal Papers” の中で、当初予定していた The City and the Pillar に関連する草稿、改訂の事情を示す草稿、および Myra Breckinredge に関する草稿は予定通り入手できた。ただ、インターテクスチュアルな関係を念頭にテクストを分析する場合、読者の反応も重要な要素であると思われるが、この点に関連すると思われる資料全てを収集し終えることはできなかった。 膨大な量の写真を撮ってきているため、まずは読みやすい形式に変換し、ファイルごとに区分けする作業が必要である。主要な草稿、つまり The City and the Pillar の改訂を探るのに必要な資料、および Myra Breckinridge の草稿類はファイルの整理を終えたが、講演原稿や手紙類の整理はまだ完了するところまで至っていない。 Truman Capote に関する資料は、当初予定していた草稿類および関連すると思われる手紙類はほぼ収集できたと思われる。ただ、ファイルの整理はまだ終わっていない。しかも、 Capote の手書き文字の判読がとても難しいため、作業は難航している。 資料の整理と分析にもっと時間が必要であるが、勤務校が2018年度の改組を予定しており、それに向けての作業にも思った以上に時間を取られているため、当初予定したエフォートを十分に確保できているか、多少心許無い。また、上に説明したように、資料収集に関し、思った以上の収穫があったため、整理や分析に予定していたよりも時間がかかりそうである。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の進め方は以下のように考える。一つには収集した資料の整理を急いで終え、ピッチを上げ分析を進めること。次いで、その結果に基づき、以前執筆した The City and the Pillar 改訂の事情に関する論考を深め、また、 Myra Breckinridge 執筆の事情を草稿から探り、その事情の論考を行うことである。 The City and the Pillar に関して云えば、二つの作品と云えるほどに大きな改訂であるため、この二つに見られるインターテクスチュアルな関係をまずは分析することになる。その際、改訂の事情を示す収集した資料は役に立つと思われる。さらにこの改訂に影響を与えたと考えられる Christopher Isherwood および James Baldwin のテクストとのインターテクスチュアルな関係を考察する。次いで、 Myra Breckinridge に関しては “camp” という概念が重要だが、 Isherwood および Capote のテクストに見られる “camp” という概念との対比を念頭に置き、草稿段階での修正に注目し、 Vidal がどのように最終形態として著す作品に見られる “camp” を形成していったか、考察を進めていきたい。その上で、 Isherwood および Capote のテクストとのインターテクスチュアルな関係に関する論考を進めていきたい。 今年度は Houghton Library と Reinecke Library 訪問を予定しており、 Vidal に関する追加の資料収集、および Williams の資料、 Baldwin の資料を収集する予定である。 なお、フルブライト研究員としてアメリカに滞在する際、教えを請うた David Bergman 氏と再び連絡を取り合うことが可能になったため、少しずつ相談している。
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次年度使用額が生じた理由 |
もう少し図書を購入することができたが、後期になり大学の雑務が忙しくなったため、図書の選定に十分な時間を取ることができなかった。ただ、絶対に必要であると思っていた書籍は入手できている。
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次年度使用額の使用計画 |
関連書籍を購入する費用とする。
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