研究課題/領域番号 |
16K02513
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研究機関 | 岐阜聖徳学園大学 |
研究代表者 |
河原崎 やす子 岐阜聖徳学園大学, 外国語学部, 教授 (80341808)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アジア系アメリカ文学 / 戦争の記憶 / 日本の植民統治 / 慰安婦問題 / 南京事件 / トラウマ体験 |
研究実績の概要 |
本研究は、アジア系アメリカ文学における日本の侵略統治の表象を歴史記憶の観点から分析考察するものであり、戦争の記憶と表象に主眼点を置く。 2年目は朝鮮における日本統治に焦点を当て、歴史文献の研究と文学作品の分析を中心に研究を進めた。ことに日韓関係を困難な状況にしている元凶ともいえる慰安婦問題をどのように位置づけるか、歴史文献を中心に社会学等にも目を向けて調査した。さらに作家の慰安婦問題の取り上げ方の背景にはどのような問題意識があるかに関しても、さまざまな方向から検討した。 これらの研究を踏まえて米国ロサンゼルスに赴き、韓国系アメリカ人の運動家や韓国系を中心としたアジア系アメリカ研究の学者たちへの聞き取り調査を行った。それにより、近年慰安婦問題に関して韓国がいわば過激な運動を展開しているが、同様な動きは他の東および東南アジアや米国などグローバルに広がっており、政治的には日本が厳しい位置に置かれていることが理解できた。これらの動向はアジア系アメリカ文学に如実に表れており、慰安婦問題が多様に表現されているのはそれを示すものに他ならない。こうした作品を作家の出身国の広がりから、最新の思考である環太平洋アジア系アメリカ文学の枠組みから論じるのは最も適切であるといえる。この思考を枠組みとして、慰安婦を扱うアジア系アメリカ文学を可能な限り網羅して分析を試み、その成果を慰安婦文学ともいえる一連の文学系列の提示とその個別分析と統合的傾向を論じた論文「「慰安婦」問題とアジア系アメリカ文学ー環太平洋から見る戦争記憶の表象」(『リベラル・アーツの挑戦』収蔵)に表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り、当初の遅れを取り戻すことができたといえる。これは昨年記した通り、これ以前に受理した科研費の研究と重複した部分によるものである。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は南京事件に集中して、同方向の調査研究を進める予定である。引き続き文献調査および現地調査を継続して推進する。また作家や批評家へのインタヴューをより活発に行いたいが、大学業務による時間的制約のためにどこまで可能かわからない。UCLAに赴いて最新情報を手に入れる努力も継続したいと考えている。できればアジアの現地調査も行いたいが、時間的に可能かどうかは流動的である。
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次年度使用額が生じた理由 |
書籍購入の予定が遅れていること、アジアへの調査ができなかったことなどで初年度から次年度使用額が生じており、次年度にはこの部分を修正すべく計画を立てているところである。
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