本研究は、太平洋戦争時の日本の侵略統治に関するアジア系アメリカ文学の表象を歴史記憶の観点から分析考察することを目的とした。これは被害国側の歴史記憶を示すものでもあり、アジア人作家も研究対象含めてジャンルの作品系譜を作成し考察した。作品の多くが1990年代以降発表されたことはアジア諸国の安定や人権観念の定着などを背景としている。作品群が共通して示すのは、日本侵略への厳しい批判と同時に、歴史と国家と個人を結ぶアイデンティティ模索である。これは太平洋戦争が被害国の記憶を表象する文学という現在に生きていることを示しており、日本は加害の歴史を忘却してはならないと認識させられる。
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