研究課題/領域番号 |
16K02518
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
入子 文子 関西大学, 東西学術研究所, 非常勤研究員 (80151695)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 『緋文字』 / ヘンリー・ニューマン / オックスフォード運動 / カトリック / イエズス会 / 『大理石の牧神』 |
研究実績の概要 |
19世紀前半に英国国教会においてオックスフォード運動を牽引したジョン・ヘンリー・ニューマンは、1845年にカトリックに改宗し、後に枢機卿にまで上り詰めた。このニューマンの影を、ホーソーンの『緋文字』のテクストに探ってきた。さらに本年は、ローマにおけるホーソーンのカトリシズムへの関心を、現地調査により確認した。 2018年5月22日~30日、ローマのカトリック教会、分けてもイエズス会の教会をいくつか訪れ、ホ-ソーンの『大理石の牧神』に関連する建築や彫刻、絵画を実地に検分し、イエズス会公文書館で歴史的背景を調査した。疑問のいくつかは解けたが、ホーソーンのノートブックにあるけれど、意味がわからない記述についての疑問は、館長さえも解けなかった。 イエズス会に関する知識は多くの書籍から得たものの、具体的な姿は知らないので、2018年11月19日~21日、宝塚市売布の「黙想の家」でイエズス会の神父による「『霊操』による黙想会」に参加し、指導を受けた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
『緋文字』のディムズデイルの人物造詣にニューマンの影を読み取るという、これまで試みられたことのない視点からテクストを精読してきた。その延長線上で、ニューマンの説教がホーソーンの短編に及ぼした影響を考察した。 さらにピューリタン作家とみなされていたホーソーンが、実はカトリック的感性を作品に反映しており、若いときからイエズス会に関心を抱いていたことに改めて着目し、『大理石の牧神』の問題点を考察した。ホ-ソーンをイエズス会とのかかわりで読むこころみもこれまで見られない。ニューマンに特化しないが、ホ-ソーンのカトリシズムの考察は深まってきている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の出発点は、ホーソーンが『緋文字』のディムズデイルをして、カトリックの神父に罪を告白させる構想を抱いていたにもかかわらず、その構想を破棄したのはなぜか、という所にあった。この疑問を解くために結局『大理石の牧神』の解読に至った。今後、再び『緋文字』に戻り、結論を出す方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
体調不良のため、当初の計画を実行できず、旅費の不使用分が残った。昨年度分の残金とあわせて次の研究計画に用いる。 1.カトリックの典礼の研究、および聖イグナチオの「霊操」を体験する。 2.すでに決まっているミニ・シンポ、オファーを受けているフォーラムの準備のため、文献を収集する。
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